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□六
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「……――っさ、斎藤さんの、勝利」


山崎君の声が道場に落ちて、すべてがようやくクリアになる。模擬刀を鞘に収めながら、どっとあふれ出た汗を乱雑に拭う。これほど清々しい終わりはなかった。

まだ立ち尽くしている友近を見やり、それから棒立ちになっている三番隊の面々を眺める。彼らと戦い抜いて、五年。長いようで短かった幸福。


それを思えば、これから死に行くことさえ、怖くはなかった。


固唾を飲んでいる彼らを知りながら、模擬刀を土方君に返しに戻る。何も言わずに去りたかった。土方君は、珍しく温和に笑んでいた。

局長は唇を引き結んだまま、泣いていた。その姿は、やはりあのときのように雄々しくて。


だからあなたについていこうと思ったんです。


口にこそ出さぬが、心中でぽつりと呟いた。模擬刀を手渡し、愛刀を差し出されてそれを無造作に受け取る。

記憶から無理矢理に消し去ろうとしていた悪夢。


なぁ、お前を殺しに行くよ。

殺せぬのなら、――それでいい。

私はこの彼らという幸福を抱いて、押さえ続けた想いを抱いて。

死ぬよ。


振り返らずに二人の間をすり抜けて歩きだそうとすれば、背後から鋭い大勢の声が耳を突き刺した。


「――斎藤隊長に、礼!!」


身体が、びくりと震えた。そのたくさんの声の中、わずかに漏れる嗚咽や押し殺した泣き声に。

心が、震えた。


「隊長!これからもつつがなく!!」

「つつがなくってなんか違くね?隊長大好きです!!」

「もう、女に手出しちゃ駄目っすよ、っく!」

「面倒だからって投げるのは無しですよ!!」

「隊長の居合いに惚れてます!いつか追い抜く!!」

「健康には気を付けて下さい!!」

「隊長!無茶苦茶やったらしょっぴきますぜ!!」


「「「隊長!!」」」


騒々しいくらい叫び上げる部下たちの声に、愛刀を握る手が強まった。滲んだ視界を誤魔化すために、左手で乱暴にそれを拭い去る。そして、一つ呼吸をし。


振り返らぬまま、笑おう。


「お前たちは、――お前たちらしくやり抜けよ」


「じゃあな」


今度こそ歩きだした。もう何も含むところなどない。

奴らが奴ららしくやるために、私も私らしく戦おう。


そう、決意した。

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