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□六
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ため息を吐きながら水を飲む。この様子じゃしばらく酒も何もすべて禁止令が出ていることだろう。


「あの娼館は無事ですか?」

「あんただってわかんねえように入ってたんだから平気でィ。女色に落とされた奴らだってのもバレてやせん」

「……気のせいか刺入ってません?」


言葉が痛い、じりじり。

沖田君ははんと鼻で笑って返答しなかった。可愛げのない。


「沖田君、君の仕事はいいんですか?」

「平気つってあんたが逃げないか見張ってたいとこなんですがねィ……」

「保護下にあるなら自分から逃げませんよ。さすがにそこまで馬鹿ではありません」


と言いつつもし沖田君がいなくなれば、一先ず万事屋に謝罪しにいこうかと思っていたのだが。それもお見通しらしく、じろりと睨み返された。


「てめえが抜けた穴を塞がなきゃいけねえから俺は出歩きやす。でもあんたはこの家から出ないでくだせェ。出たら……」

「出たら?」


なんだその黒い笑みは。

思わず顔がひきつる。確実にいいことではない。


「わかりました、出るのは諦めます。代わりに土方君へ伝言を頼めますか?」

「仕事関連ならかまいやせん」

「なら沖田君の家から出たいです」

「却下。命の恩人に対してその態度はどうなんですかねィ?」

「命の恩人をかさにきて弱者を脅すのはどうなんですか……」


なんだこいつ、性格のねじ曲がり方がますます嫌なほうにいってるぞ。

ため息をもう一つついて、食事をする手を止める。それからきちんと彼の視線をとらえ、また子から仕入れた情報を話しだした。こういうときはすぐにまともになれるなら、いつでもまともでいて欲しいのだが。


「鬼兵隊高杉晋助は、宇宙海賊春雨の総督と手を組んだようです。詳細ははっきりとはわかりませんが、来島また子から聞いたとあらば、かなり信憑性は増すかと。それから、こちらはまだ確認していませんが――」


「春雨の総督は、神威に変わったようです」


「……そいつ、誰でィ?」

「君はまだお会いしてないんでしたっけ。まぁ詳しくは土方君から直接聞いてください。実際にやり合うとなったら私ではなく君でしょうし」


ふう、とため息を吐いた沖田君は立ち上がり、寝室へと向かった。おそらく着替えてから屯所に行くのだろう。その間に食器を片付けてしまおうと、テーブルの上を片付け流しに皿を持っていく。

洗おうとしたところで、不意に腰を抱かれる。とっさに肘鉄を食らわせようとすれば、耳を撫でる優しい声が容易にそれを制した。


「そんなんやんなくていい。休んでろィ」

「さすがにそれは悪いで、す――」


振り返ったその一瞬、柔らかなものが唇をかすめた。

それが何か理解するより早く、彼の顔と腕が離れていった。はっと我に帰ったときにはもう流しから出ていくところだった。


「いってきやす」

「ちょ――!」


にやっと愉快そうに笑った彼に苛立ち、それに任せて何かを投げ付けようとしたところでタイミングよく扉が閉じた。余計いらっとする。


「……なんなんですか……」


訳が分からない。

彼の行動も。

とっさに反応できなかった自分も。


わからない。

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