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□六
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「あ、沖田隊長!斎藤さん戻られたんですよね?元気でしたくうがッッ」

「んなわけあるか……。あれから調子はどうだ?」

「ピザ食って普通に寝てやした」

「無理させるなよ、総悟?」

「何を無理させるんですかィ、手出したくとも今は無理でィ」

「今出したら確実に斬られんぞ……。山崎寝てんじゃねえよ」

「今俺被害者ァアア!!」


騒いでいる地味崎をシカトし、土方にぐいっと紙の束を押し付ける。訝しげにひそめられた眉をタバコの火でいぶる計画を練りながら斎藤の話を伝えた。


「……――ってことらしいんで、俺にもそいつの情報回してくだせェ。あと高杉の野郎の情報も入り次第真っ先に俺に連絡して欲しいんで、よろしくザキ」


名前を呼ばれてようやく山崎は自分が呼ばれた理由に思い至ったらしい。俺の顔を一瞥し、それから視線がうろついた。


「俺はそれでも構いませんが……、副長?」


土方さんのほうを見やれば、タバコの紫煙が空へと立ち上る。その奥で、冷めた視線が俺をしっかりと捕らえていた。


「俺も異論はねえよ。てめえのやりたいようにやれ。その結果あいつが傷付くようなことがあれば――」

「てめえの姉貴に代わっててめえをぼこす」

「はっ、おめえが姉上に代わるなんざ百万年早いんでィ死んで出直すことをおすすめしやす」


いきり立ちそうになる心を抑えても、口からは遠慮のない言葉が刺のように吐き出される。激痛を与えているようで、痛いのは俺も一緒だった。

痛ェよ、斎藤。

あんたは、いっつもこんな痛みを負ってたんですかィ。

俺や、こいつが。

笑ってる、その横で。


「……はっ。苛々するぜ。ガキならガキらしいちゃっちい飯事でもしてりゃあ良かったんだよ」

「飯事馬鹿にしてっから辛子投入されたマヨネーズぶっかけられても気付かなかったんだろィ。ざまぁみろ死ね土方」

「いつの話してんだてめェはァァアアッ!!!!」

「……きょ、局長。止めなくていいんですかあれ……。折角ちょっといい話っぽかったのに台無しですよ」

「いやあいつら止められるわけないだろ……。それに、たまにはいいんじゃないか?二人が大事にしてることだし。あ、でもあれな、総悟」


しんみり話している真横で土方にマヨネーズ顔面にぶっかけようとしていると、不意に近藤さんに声をかけられて渋々手を止める。


「何ですかィ?」

「さっきもいったが、壱に無理だけはさせんようにな。そういうことももちろんそうだけど、あんまり我が儘をいって困らせるなよ?壱も一人の女になるんだから」


一人の女。

その言葉に土方も山崎も、改めて思い出したようだった。今まで完璧に男として、いやそれ以上に頼りになる隊士として、ここにいた奴が、数日後にはただの市民へと成り代わる。

事件にでも巻き込まれなければ会わないような存在に。

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