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□七
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「それはちょっと遠慮願いたいものですねっ――!私には、っそんな趣味、ないので!!」
「俺は面白いよ?」
「俺も面白いな」
「君たちだけです――っ」
飛んでくる銃弾を避けつつ同時に背後から振るわれる男の刀も避けなければいけない。さぞや不気味なステップを踏んでいることだろう。
それでも避けきれない銃弾が身体を蝕む。よろけそうになる身体を叱咤し、足を踏み出した瞬間自分の流した血に足をとられ、ぞっとする。ここで転んだら……!!
「っ――!!」
けれどそういう風に他に気を取られれば他の攻撃を受けるものだ。体勢を崩したところを見逃さず、男の刀が足を浅く斬り裂いて、堪え切れずに私はその場に崩れ落ちた。
向けられる、刀の切っ先と傘の先。
わずかでも動けば確実に死ぬことはわかっていた。それでも、刀を握り締める指は震えながら放すことはない。
目を瞑ることすら自分に許さず、私は静かに顔を上げた。迎えるのは公敵である高杉や神威ではなく。
私怨の仇敵。
は、と笑みが零れた。疲れていた。休みたかった。……愛し、かった。
名も知らぬ男は左頬の傷を歪ませ、私に応えるようにして笑っていた。それが、紛れもなく私にだけに向けられていて。
ここまで生きて戦い抜いてきたことを讃えるかのような、男の笑みが、愛しかった。
馬鹿みたいに、この男になら抱かれてもいいと。
そう、思った。思ってしまった。
「じゃあな、嬢ちゃん」
それで、済むはずがないと、頭の片隅でわかっていたからかもしれない。
私はにこやかに笑いながら迫りくる斬撃を見つめていた。
さぁ、いつまで傍観しているつもりなんですか、ヒーロー君。
あんまりぼけっとしてると、私はふらふら仇敵についていってしまいますよ――?
「沖田君」
ドカァァアァアアンッッッ!!!!!
呟いた私の声を掻き消すような勢いで爆風を受け、それに対応することもなく、目の前に迫っていたはずの刀を斬り上げて跳ね退ける。そのまま跳ぶように爆風から身を退けて、バズーカをぶっ放した張本人を探そうとすれば、不意に背後から抱き寄せられた。
「――何、抱かれてもいいみてェな顔して惚けてんでィ、クソ野郎」
久しぶりに聞く、君の声。
耳によく馴染む苦しそうなその声は、あの日からずっと求めていたもので。
はは、と笑う私の声は、泣いていやしないだろうか。
ちゃんと、笑えている?いつものように平然と超然と、笑えているだろうか。
「お久しぶりですね、沖田君。抱かれてもいいと思ったのはほんと、っ――……んっ、は」
「ざけんなぜってえ駄目でィ」
早急に唇は重なって、こじ開けられたそこから舌は躊躇いなく私の中を蹂躙する。
溺れそうな勢いと、その狂おしいくらいの甘さ。それから囁く低音と私を責める赤い眼に、身体が震えた。
「誰にも、渡さねェ」
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