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□七
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「傷は?」

「右太股の銃創が一番酷いですね。それと肋骨が折れたかもしれません。あとは切り傷がいくつか」

「自分でやれそうですかィ?」

「ええ。お湯どうぞ」

「ん」


浴室に向かう彼を見送ってから、ベッドの上に座り浴衣を緩めて右脚を伸ばす。まだ血を垂れ流すそこに舌打ちし、止血をしてから処置を始めた。

肋骨はどうしようか、痛みは酷く続いているものの、処置の仕様がわからない。指先で腹部から肋骨のほうへと撫でてみれば、明らかに腫れている箇所があった。とりあえず湿布でも貼っておくか。

ぎこちない動きで湿布を手に取り貼りながら、改めて山崎君がどれほど傷について詳しかったかに感動する。でもこの場にいなくて助かった。いたら確実に明日、ここから出してはくれないだろう。


土方君も近藤さんも、きっとそうだ。

沖田君だからこそ、躊躇いなく無言で送り出してくれる、そんな気がする。それはきっと私が彼にミツバを重ねているからだろうけれど。

ふ、と笑みをこぼし、放り出したままだった刀を取る。その冷たい鞘には誰かの血が付着して、黒の中に混じっていた。それをどうしようもなく抱き締めながら、目を瞑る。

その瞬間緩やかに意識が下降し、深い底に沈み込んでいく。落ちていく自身を止められず、ベッドに横になればまるでスイッチが切れたかのように、すべての意識を失った。




ふと髪を撫でられたような気がして、薄らと意識が引き戻されていった。ただ痛みが溢れていて思考が混濁したまま、揺れる視界に遠ざかる彼の手を掴む。


「壱……?」

「おき、た、……君」

「……おう」


振り返った彼はしゃがみこんで、穏やかにそう応えてくれた。暗い部屋の中、彼の赤い瞳が揺らめく。


「どこに、行くつもりでした?」

「……寝呆けてるわけじゃあ、ないんですねィ」


苦笑混じりの言葉に頷く。血を失った身体が新たにそれを作り出そうと眠りに誘ってはいるが、それも気にならなかった。

今握り締めている彼の指が、離れていくことのほうが、怖かった。


「同じ部屋にいたら襲っちまいそうですからねィ」

「素直、ですね、珍しく」

「俺は稀に見るほどの正直者でィ。だから」


重なった手を、もう片方の手で包み込んで、懺悔するかのように彼はいう。


「……悪ィ」

「沖田、君?」

「追い詰めてるってわかってやした。あんたは本当にあそこが、真選組が好きだって、わかってやした。なのに、俺はあんたを裏切った。裏切って、あんたを俺のもんにしようとした」


訥々と落ちる言葉に、あのときのことを言っているのだと理解する。

高杉の元から帰ってきて、自分が女だと、再認識してしまったあの夜。


「あんなに女でいることを拒否してたてめえに、俺は、無理矢理それを思い出させた」

「沖田君」

「聞いてなせェ。一生に一度の謝罪ですぜ?」


はは、と笑う声は、どこか今にも泣き出しそうで。


「壱。俺はあんたが好きでィ。しつっこいくらいにいってやる。……でも、あんたの望みは女としての幸せじゃねえから、俺はあんたを幸せにできねえ」

「だから」

「もう、あんたとは関わらねえ。それで、いいだろィ?」



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