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□七
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と、半ば押し切られた形で了承したものの。
「休み、というのはどうにも落ち着きませんね……」
朝食を食べ終え寝間着から着流しに着替えたところまではいい。問題はこのあとだ。
この二週間はほぼ松平宅に行きっ通しだったため、特に行くようなところは思い浮かばない。真選組から支給されたままの携帯も、いっかな鳴る気配も見せず、それを寝台の上に放ってため息をついた。
部屋の中に物は極端に少ない。屯所にいた頃は資料などが乱雑に重なっていたが、それすらもない今は、生活用品だけが際立って映った。
なんにもない部屋ばかり見ていてもつまらない。やはりかよの元に向かおう。
そう決めて立ち上がり、刀を腰に帯刀してちらりと放ったばかりの携帯を見やった。鳴るはずもないのだ、置いておいても構わないだろう。
「行ってきます」
応える声がないことを知りながら、一つ苦笑を漏らして家を出た。この状態を、彼には知られたくないなと思いながら、歩を進める。
ああまたこれだ。
離れない。君の声。
「もう、遅いのにね……」
呟く声は白い息となって鉛空に立ち上る。つられて上空を見上げれば雪でも降り出しそうな雲が、泣き出しそうに笑っていた。
誰もいない部屋の中、白い携帯が着信を知らせていた。そこに表示された名前は、
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