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□七
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「……それにしても、随分警備の数が多いですね」


ぼそりと呟きながらホールを見渡せば、そこかしこにいる黒。真選組ではないようだが、どいつも皆一様に鋭い眼光をしている。これほどの人数を引っ張ってこれるなど、一体このパーティーの主催者は何者だろうか。

刀を受付で預けたことが悔やまれる。パーティー参加者には必要ないが、護衛としてはなければ困るのだ。
けれど参加者として入る以外は許されていないらしく、刀はあっさりと没収された。まだバッグの中には小太刀が一つ、懐にも小刀を忍ばせてはいるが、幾分心許ないのが事実だ。


「どこを見てるのでする?ちゃんと楽しんでくださらなければ勿体ないでする!」


早くも飲み物をゲットしたらしい彼女は、ほのかにアルコール臭が漂うそれに口をつけながら睨んできた。それくらいのお茶目なら目は瞑れる。

このパーティーは立食形式らしい。広い会場にテーブルがたくさん置かれ、その上に美味しそうな料理が山ほど乗っていた。飲み物を持ったウェイターが数人ホール内を行き交っていた。それをぼんやりと眺めながら苦笑する。


「楽しむといったって何を楽しむんです?まだ始まっていない……、っ!?」


思わず足を踏みこみ駆け出しながら、見出だした黒い衣、その背中を追い掛ける。栗子の呼ぶ声を背後に聞きながら、追って廊下を曲がれば、そこにはもうあの黒い衣は存在しなかった。

ただあるのは、閉じられた扉。

関係者以外立ち入り禁止とかかれたそこをじっと凝視していれば、不意に後方から現れた影に気付いた。静かに振り返れば、鋭い目を笑わせた男が立ってこちらに声をかける。そいつの隣には、栗子が怪訝そうに立っていた。


「どうしました?そちらは立ち入り禁止ですよ。ご友人もお待ちのようですし……」


そのまますたすたと歩み寄ってくる男は、横を通り抜ける寸前、笑った。


「それで、守れるの?」

「――っ!」


とっさに奴を捉えようと手を伸ばせば、後ろから飛んできた声にそれも止まる。


「壱様、いつまでやっているのですか?迷惑ですし行きましょう」


男は最後に私に笑みを向けると、そのままその扉の中へと入っていった。言い様のない脅威にわずかに震えながらも、手を強く握り締める。

なぜ、お前がここにいる?


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