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□してやったり
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風が頬を撫でていった。死臭の混じる生ぬるいそれの気味悪さに、眉をひそめながら振り返る。なぜか俺は小高い丘の上にたっていて、あたりには霧が立ちこめていた。


視界のずうっと奥に、大切な人の姿が陽炎のように揺れていた。


「姉上!」


手を伸ばし足を踏み出しても、霧は鉛のようにへばりつく。名前を呼びながら、彼女のほうへと動かない俺の足を恨み、泣き出しそうに叫ぶ。なぜか視線が低くなり、俺は子供のように顔を覆って泣きだしていた。


「あね、っうえ……あねうえ、あねうえ……うっう、うぁあ……!!」


行かないで、行かないで行かないで行かないで。

がむしゃらなまでの望みが身を焼いた。苦しくて咳き込みながらも、彼女の姿を追い求める。いつまでもいつまでも追い掛けていたその人は、いつのまにか、今誰よりも恋しい人へと姿を変えていた。

俺の体は小さいまま、手を伸ばし、子供のままに泣き叫ぶ。


俺を、僕を置いて、行かないで。


「行か、ない、で」


姉上。


……壱。


「……行きませんよ、どこにも」

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