novel

□桃+飛燕×富樫
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桃と飛燕を連れ富樫は自宅に帰りついた。
「おうし!飯の支度すっか!」
富樫の肉親は兄がたった一人だった。その兄は海外に赴任しており実質一人暮しのようなものだった。
富樫は大変なさみしがり屋なので、兄が家を離れる時は辛くてしかたなかったが、兄を困らせてはいけないので随分我慢したものだった。
そんな時虎丸と一緒にハムスターを飼った。富樫も虎丸同様マンション住まいなので大きな動物は飼えないがハムスターなら問題ない。富樫は2匹が可愛くて仕方なかった。2匹のお陰で兄のいない寂しさも随分紛れていた。
「よし!飯も食ったし、そろそろあれだ!」
富樫は桃達を殆どケージに入れずに放しっぱなしにしていた。
2匹はちょこちょこと机の上を移動していた。
「さて、おまえら風呂だけど、どうやって入れようかのぅ」
富樫は虎丸んちのハムスターが風呂にいれてもらっていることを知ってかなりその気になっていた。正確には自分で入ってるのだけど。
「そうだ!」
富樫は少し深みのある小さな皿を用意して洗面所に向かった。ぬるま湯を張って温度をみてみる
「う〜んこれぐらいかのぅ」


(まずいですよ…)
(うむ)
(このまま体を洗われてしまったら私たち死んでしまいます)
(…そろそろかな)
(変わりますか?)
(伊達じゃないが時期ばかり見計らっていてもな)
(そうですね)

「桃、飛燕…あれ?」
富樫がリビングに戻ってきて机の上2匹に手の平を差し出す。けれどいつもならトントンと飛び乗ってくるのがどうしたことか背を向けて机から降りた。
「お前らどうし…」
富樫が問いかけようとした時2匹が発光した。眩しくて思わず目を閉じてしまう。次に目を開いた瞬間富樫は固まってしまった。
「なっ…何…もんなんじゃ!?お前ら!!」
そこには2人の男がいた。
「ま、まさか強盗!?」
「ご主人…」
「俺は桃でこっちは飛燕だ」
「なっ!?」
「すみません、驚かしてしまって」
「はっ!そういや桃と飛燕はどこ行った!?」
「…ご主人…信じてはもらえないか?」
「仕方ありませんね」
桃と飛燕はそう言って元のハムスターに戻り再び人間に姿を変えた。
「これで信じて頂けますか?」
「桃、飛燕…」
確かに言われて見れば桃は鉢巻き柄が本当に鉢巻きになっているし飛燕の髪はピンクだ。
…だけど…。
「あれ?俺疲れているのかなあ?」
富樫は額を押さえて倒れ込みそうになるところを桃と飛燕に支えられる
「大丈夫ですか?」
「お、おうすまねぇ」
思わず謝ってしまう富樫。
「俺疲れてるのかなあ?だってお前達は確かに桃と富樫に違いないわけで…でもこんなことって…」
「ご主人…俺達は人間になれるちょっと変わったハムスターってだけだ気にするな」
「いつかは、こうしてご主人に姿をお見せしようと思っていました」
「なるべく驚かせたくはなかったが…すまない」
「ハムスターの体を洗われると死んでしまうんです、それで丁度よいタイミングだと思って」
「そ、そうだったんか!?」
「ああ」
「そりゃ、すまねぇ!!大事なお前達を死なすとこだった…」
「謝らないで、ご主人を責めているわけではないのです」
「俺虎丸のとこのおみちゃんが風呂にいれてもらってるみたいだからついな」
「あれは自分で入ってるんだ奴も人間になれるからな」
「え?そうなんか?それで虎丸の奴ハムスターに異常はないかとか聞いてきたんじゃな」
「そういうことでしょうね」
「でも最初は驚いてひどいこと言っちまってすまねぇ…でも今はお前らが人間になれてこんな風に話できて俺は嬉しい!」
「…飛燕」
「桃…私達は決してご主人の選択を誤ってなかったですね」
「ああ」
「あっ!だったらお前らもおみちゃんみたいに風呂入ってこいよ」
「だったらみんなで入りましょう」
「それがいいな」
飛燕達の爆弾発言により禁断のお風呂へと場面は移り変わるのだった。
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