novel

□伊達×虎
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俺はついにご主人と結ばれた。
ついでに愛の告白もした。寝物語みたいにはなっちまったけど。後はご主人と二人で幸せに暮らしゃあいいんだ。
俺は気を失ったご主人の体を綺麗にしてやりながらそんな事を考えていた。
(おっ、夜が明けてきやがったか)
カーテンの隙間から明るい陽射しが入ってきた。そして日の光が俺の体を照らした時妙な感覚がしたかと思ったら次の瞬間ハムスターに戻ってた。
(な、なにぃ!?そ、そんな馬鹿な!何故?)
俺は何が何だか訳がわからなかった。ご主人のベッドの傍らに立ってたはずなのに今はそれを見上げてる。
「おみちゃん!一体どうなっておるんじゃ!」
ご主人が驚いて大きな声を上げた。
(目ぇ覚ましたんだな)
「ちょっと待っておれよ、今上げてやる」
ご主人は起き上がろうとした
「…っ…う、起き上がれん」
どうやらご主人は体が痛くてベッドから出られないようだ。
俺は心配でとりあえずご主人の側に行こうと必死でよじあがった。
(くそ!なんでこんなに高いんだよ!)
富士山並の高さに俺は苦戦をしいられながらもなんとか大好きなご主人の元へ辿りついた。
(大丈夫か?)
そう聞いたつもりだった。
(っ…そうか…俺人間の言葉喋れ無いんだった)
(なんてもどかしいんだ!)
「なんじゃ、おみちゃん心配してくれておるんじゃな」
(ご主人は俺が心配してるってことわかってくれてるんだな)
言葉は通じなくても気持ちは通じている。ふっ、やはり俺とご主人は相思相愛だ。
「それにしてもおみちゃんが無茶苦茶やるから本当に起き上がれんわい」
そうはいいながらもご主人は俺を攻めるでもなく微笑みながら言った。俺はご主人の頬に体を擦りよせた。
「おみちゃん、くすぐったいわ」
んな顔されたらまたやりたくなるぜ。残念ながらできねぇけどな。
「しかしまいったのぅ、これじゃあ学校休まねぇとだけど…携帯っと…テーブルの上か、ちょっと遠いのぅ」
ああ、俺が人間の姿なら学校に電話して一週間ぐらい休ませて四六時中入れたり出したり…それも虚しい妄想だぜ。
ピンポーン
ピンポーン
「あっ、卍丸先輩じゃ!」
卍丸…あいつか!いつもご主人に纏わり付く助平野郎だ!だからこの前、俺様に触ろうとした時噛み付いてやったけどな!
「どうしょう、先輩がせっかく来てくれたのに」
ご主人は痛む体で一生懸命起き上がろうとしている。ほっとけほっとけあんな奴。
「っ…」
(…)
しゃーねぇなあ、ちょっと見て来てやるよ、俺は本当優しい男だからな!
「あっ、おみちゃん!」
玄関に行ってみると奴が下品な声を張り上げている。全く朝早くから近所迷惑だ。
「虎丸!起きてるか?虎丸!」
ガチャ
「おっ、開いてやがる、ったくあいつ俺がいつも必ず戸締まりしとけって言ってるのに!」
まさかご主人鍵かけてなかったのか!これからは俺が気ぃつけておかないと…何だ?頭上から黒い影が!
「虎丸!無事か!?」
奴のでかい足の裏が俺めがけて降りてきた。
(くそっ!)
この野郎!俺のことなんか眼中ねぇな、全く気味悪いぐらいご主人一筋だぜ!!俺は間一髪よけてご主人の部屋へと戻った。
「と、虎丸!大丈夫か!?」
「せ、先輩…出迎えできずにすんません」
「馬鹿!んなこたぁどうだっていいんだよ、鍵開いてたんだ!」
「ああ、それで先輩入ってこれたんじゃな」
「馬鹿たれが!」
なっ!?俺はその光景に頭が沸騰しそうになった。卍丸の野郎がご主人を抱きしめてやがった。
「尋ねてきたらお前は返事しねぇ鍵は開いてるし、てっきり襲われたんじゃないかと思ったんだよ…」
確かに俺が襲ったけどな。
「先輩…」
「虎丸…」
「ちょっと苦しい…です」
「あ、ああ…すまんな」
お前らいい感じになってんじゃねぇよ!これじゃ俺が悪いみたいになってんじゃねぇか!
「あれ?おみちゃんは?」
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