novel2

□先輩と一緒
1ページ/1ページ

今日も富樫はセンクウの部屋に来ていた。
「富樫、夜更かしは美容に良くないからさっさと寝なさい」
「ぶはっ!」
飲みかけの上等なコーヒーを吹き出す。
「なんだ汚いな」
「だって、あんたがとんでもない事言うから…」
「何を言うお前が何時までたってもテレビを見て寝ようとしないからだ」
「だって眠くないしそれに美容なんて」
「美容と言うと語弊があるが要するに事故管理だ」
センクウは紅茶を口に運んだ。
「睡眠不足が続くと体調不良になりやすいからな」
「う、うん」
富樫はセンクウの所に遊びに来ると嬉しくて仕方ないからあまり眠くなくなる。「まあ、もうちょっとだけな…」
「おう!ありがとうなっ!」
「なんか知らんがお前は甘やかしてしまうな」
センクウは苦笑する。
「なあ、これ旨ぇな!」
ゴディバの高級チョコがまるで徳用チョコみたいにポイポイ口の中に入っていく。
「あんまり寝る前に食べると太るぞ」
「うっ!」
「まあ、お前は細いがな」富樫はホッとしてまた両手にいっぱいチョコを掴んで口に運び。センクウは目を細めてその様子を見る。
「なんか、兄ちゃんと一緒にいるみたいじゃあ」
「そうか」
「兄ちゃんも怒るけどだいたい最後は折れてくれてたんだぞ!」
ああ、これじゃあちっともしつけにならんなとセンクウは思いつつも何と無く甘やかして怒れ無くなる兄貴の気持ちも良くわかっていた。富樫のそう言う雰囲気や言動は天性のものだ。
「なあ、これってどうやってたっけ?」
リモコンをフリフリする。「それはな…って前も教えたろう?」
「えっ?そうだっけ?」
「いや、それも一度や二度じゃないぞ」
「ありゃあ、ごめん」
謝ってはいるがあまり反省してる様子はない。忘れると言うより覚える気がないなとセンクウは思った。
「センクウ先輩、優しいのぅ」
「…っ」
富樫は兄に大事にされてまっすぐに育ち過ぎだから思ったことをまっすぐに表現してしまう。
「あっ!もしかして先輩照れとるなっ?」
「富樫の表現がストレートなのは慣れたから大丈夫だ」
「え〜っ、そういう問題?」
センクウ先輩のり突っ込みとかしてくれたらええのにと思った。センクウ先輩は大好きだけどもうちょっと面白かったらゆうことないんだけどなぁ。
「そういう問題だ」
「う〜ん、まっいいか!」楽天的なのも富樫の美点だ。
「さあ、そろそろ寝るぞ」「え〜っ!?」
「え〜、じゃない」
センクウは富樫の頭を軽く叩く。
「私の所に来て遅刻などさせんぞ」
「ちぇ、わかったよ」
「歯磨きしてこいよ」
「餓鬼じゃねぇよ」
注意しなければさぼろうとするくせに。
「早く行きなさい」
「へ〜い」
「素直でよろしい」
富樫が歯磨きしている間に簡易ベッドの仕度をしてやって富樫と入れ代わりに洗面所に行く。
「…何をしているのかな?」
洗面所から戻るとちゃっかりセンクウのベッドに横になっていた。
「えっ?寒いから一緒の布団でいいかなと」
つぶらな瞳をキラキラさせて楽しそうに待っている。「…富樫、ちゃんと自分のベッドで寝なさい」
「でも兄ちゃんは一緒寝てくれたんだけどなあ」
「残念ながら私は実の兄ではないから一緒は駄目だ、けじめはつけないと」
一緒の布団で寝たいのはそれはそれは山々だけど今はやはり学生同士なのでそこはキチンとしたいとセンクウは常々思っていた。
「しゃ〜ねぇなあ、けど明日の朝はホットケーキにしてくれよな!」
「メープルシロップたっぷりだろ?」
「うん、そうじゃ!でもいつか一緒寝ような!」
「…う…うむ」
サラっと爆弾発言だなと流石のセンクウも赤面した。「明日の朝はカフェオレにフルーツも用意してやらねば」
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ