てきすと

□華のように蝶のように
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街の花屋で真っ白な百合の花束を買った。風で流れてくる香りが嫌でも鼻につく



百合はあまり買ったことがない。香りが強いし第一、その香りも好きでは無いからだ。でも買った理由がちゃんとある。


ファミリーの部下が亡くなった…いや、殺された。
ただの部下なら行かなくても大丈夫だが、側近の幹部だったので参加しなくてはいけない。



隊服でなく、喪服を着て徒歩で教会へ向かった。
車で行かなかったのは少し気になっていたケーキ屋が見たかったから。


(…あ、見付けた。)
しかしその瞬間、強い風が吹いた。


また百合の香りがするのは嫌だったのと、綺麗な百合の花弁を散らすのが嫌だった僕は花束を下に向けた。


これで良いと思い前を向くと、喪服を着た人物が僕の横を通り過ぎた。


その次に風に乗って僕の鼻を掠めた未体験の香りが僕の脳を刺激した。

その香りは甘いようで、しかし爽やかさもある不思議な香りだった。


振り向いて確認しようとしたが、喪服を着た人物は何処にも見当たらなかった。

再び風が吹くまで残り香は僕を包み込んでいるかのように漂っていた。


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