過去編

□05
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「おい、メフィストッ!!」

ノックもせず、乱暴に理事長室の扉を開け放ったのはいつも通り神父服を身にまとう藤本。

机の上で書類整理をしていたメフィストは不快げに眉を寄せ、仕方なしに藤本に視線を向けた。

「貴方という貴方は。もう少し落ち着けないものですかね…。」

「落ち着いてられるか!!これで何度目だッ!!」

おおよそ藤本が言わんとしていることを予想していたメフィストは、ため息を吐き出しつつ、つまらなさそうに手元のペンをまわす。

「何なんだよ卯月の奴は!!」

「今度は何をしたんですか?」

「授業不参加だ!あいつ本当に祓魔師になる気があるのか!?」

レイナの審議が終わってもうすぐ2週間が経過しようとしている。

祓魔塾に通いながら日々を過ごしていたレイナであったが、ここ数日どういうわけか授業をまともに受けないでいることが多くなっていた。

しかしどうしたのか問うたところで、答えが返ってくることはなく、流石のメフィストもお手上げ状態だった。

「弱りましたね。原因がわからないようでは、手の施しようがありませんし。」

ふむと顎に手を当て、考える仕草を見せる。

本当に真面目に考えているのかと、藤本は苛立ち額に青筋を浮かべた。

「まあ、もう少し様子を見ましょう。もしそれで何も変わらなければ、私も検討してみますよ。あの子にはいつまでも訓練生で止まって貰っては困りますしね。」

出来るだけ早くレイナを祓魔師と育てあげ、ヴァチカンに認めさせなければならない。

表に出さずとも、メフィストは焦りがあったのは確かだった。

藤本は1つ息をつき、来客用のソファーに腰をかけ、足を組んだ。

まだ何か用があるのかとメフィストが怪訝そうに見やれば『いちゃ悪いのかよ』と返される。

何とも困った男だとため息を吐き出した時だった。


…不意に感じた悪寒。

ぶるりと一度身震いをし、腕をさする。

大して気温も低くないというのにいったいどうしたと言うのか、メフィストは内心首を傾げた。

気にすることでも無いが、どうも胸騒ぎがしてならない。

何なのだろう、嫌な予感がする。


「…そういや、あいつ、ヴァチカンから来るらしいな。」

「は?」

ふと思い出したように漏らす藤本に間抜けな声を発してしまう。

「何の話です?」

「聞いてねぇのか?」

『これ言っちゃ悪かったかな』と口元を抑える藤本に、悪い予感が外れていないことを悟る。

祓魔師の日本支部への転勤などメフィストの知る限りない。

藤本は、いったい何を知っているのか。

「…答えなさい藤本。いったい誰が来るというのですか?」

不機嫌な表情のメフィストに、もうシラを切っても無駄かと、彼は頭をかきながら渋々と口を開く。







「ほらあいつだよ、"勇"。」


ヒヤリと背筋に冷たいものが通ったのを感じた。





不吉な予感
(聞き間違いであることを願いたかった)


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