11/12の日記

19:31
共通点
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N氏は気紛れな性格である。
そのせいでチャンスを取り逃がしてしまうのだ。この間だって社長令嬢との見合いをすっぽかしてしまった。
理由は「気が乗らないから」唯、それだけだ。
それにN氏はよく嘘を吐く。それもすぐにバレる嘘だ。
小学生の姪ですら騙せないのだから我々の様な「大人」を欺ける訳がない。
それでも彼はしたり顔で日々幸せそうに(時には悲劇のヒーローを気取りながら)生きているのだ。
そんなある日,彼はFと呼ばれる男に出会う。
二人には共通点が多くあった。誕生日、血液型、父親が小学校の教師であること。その他様々な偶然があり二人は意気投合した。
互いが互いを他人とは思えず何を話しても通じ合えた気がしたという。
しかし、時が経つにつれFはN氏に不信感を抱いた。
言葉には頷けるのだが何故か具合が悪いのだ。
酒を呑み交わしながら好きな音楽について語り合っても、政治について議論しても。
Fは気づいた。N氏は自分の「真似をしていただけ」だと。
Fは問い詰めた「N、僕の真似をするのはやめたらどうだ。」
N氏の答えはこうだ。
「仕方無いだろう。僕にとって誠実とはこういうことなんだ。」
Fはその日を境に彼から離れた。

数年後、Fのマンションに封筒が届いた。N氏だ。
同封された写真には自分とそっくりな男が自分と同じ服を身に付け自分の妻によく似た女性の横に立っていた。
手紙にはこう一言。
「ようやく嘘つきをやめられたよ」

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