┣そよ風の物語(小説

□そよ風の物語…
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「わかっていますか?貴女(あなた)の立場…」


少年と少女は場所を移動した。
公園…。
遊具などない、ただ煉瓦を敷き、花壇があり、木が植わり、長椅子がある。

道の一部…という具合だが、公的には公園なのだ。

場所は、中心街道(まぁ都市の真中心)から少し離れているのだろうか。

人は一人もいない。中心からさほど離れた位置ではないというのに、彼ら以外はまったく。


「立場…?」


少女は不安そうな顔で尋ねるように呟く。
少年はため息と共に肩を大きく落とした。

本人だって理解しきっていないわけじゃない。
だが、理解したくなかっただろうし、できれば今は忘れていたかったに違いない。


「ゾルボニア国の姫ですよ…。エリザ姫でしょ…」


お姫様。そして、少女は名前をエリザと言うのだ。


「でも…喧嘩は勝率90%越えてるし…」


エリザはそう返した。既に何が言いたいか分からない。
とにかくなんとか言い逃れしたいのだろう。
少年が叱るように言うその言葉は、
彼女にとって耳に痛い話には違いないのだから。


「そういう問題じゃないでしょうが…。それに喧嘩なぞ、野蛮行為です」


少年は言葉で丸めこむように言う。
だがそれは婉曲(えんきょく…遠まわし)というよりも露骨に核心であったのだが。

流石にやんちゃな姫様も観念した。
年齢の割に利口なようだ。


「ごめんなさい…」


目をそらし、でも反省した様子で謝った。
本当に反省しているかはともかくとしても、誠意はある。

だが少年は、その顔が可愛らしいと思えて言葉を失う。


「…」


少年は、長い期間の護衛の内、この姫に恋をしてしまったのだ。
そして酷い話、ロリコンになってしまった。(悲惨

しかしそれだけ魅力があった。
そう陥ってしまうのは不本意的にもあり得てしまうのかもしれない。

容姿は最初の説明どおり、荒れ果てた大地に咲く綺麗な薔薇の如くなのだ。


「今日はもうこれっきりですからね?」


少年はエリザの頭を撫でてやった。小動物でも撫でるように…。


「あぅ…」


少女はゲンコツが来るかと思っていた。
想定外の行動に驚きを隠せないエリザ。

とても申し訳なく思った。
彼は笑っているのだ…。


「うん…」


顔を赤くしながら、エリザは了解した。
今日はもう暴れない。本気でそう思った。



少年の紹介もしよう。
彼はグレン=レグナルと言う偽名を使って護衛兵に入隊。
実名レッド=エイスト。偽名には意味があるが、ここでは伏せておく。



そして二人は先ほどの道に出た。
昼前の街は人が減り、先ほどの騒ぎの時間より半分ほどの人数しか見当たらない。

そう言えばあの大男はどうなったのだろうか…。




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