┣そよ風の物語(小説

□そよ風の物語…
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騒ぎが聞こえる。
白い髪の少年レッドはハッとした。

いつもこの騒ぎの先にはエリザ姫がいるのだ。
前、相手を血まみれにしている姿が凄く印象に残っている。


“手違いで”


大人数人に勝った挙句、唖然としたギャラリーができ、本人は返り血だと思われるものを浴びて、
こちらを見つけて走って来ては言い訳…。


最近は血だらけになるようなことは少ないが、昔はよくあった…。

当時の彼女は容赦がなかった。


レッドは右下視線にエリザがいることを何度も確認した。


「あ…、いた」


「…」


「あ…、いた」


「あの騒ぎは私じゃない!!!」


左上視線でエリザ姫が怒りながらかえした。


騒ぎは遠くない。
喧嘩騒ぎだと思われる。

公園は勿論、公園周辺には人が少ない。そこそこいる場所は限られる。そしてすぐそこだ。
しかも、先ほど自分達が騒ぎを起こした場所周辺だ…。


「いってみよっか」


エリザ姫はまるで当たり前のように言い捨て、しかも返事は聞こうともしなかった。
既に歩き出しているのだ。


「ちょっと…」


案の定無視され、それどころか見失う勢いだ。
最初こそ歩き出しだったが、既に走っている。
ため息をつき、急いで追い掛けた。






「た…ったすけ…」


エリザ姫の耳に入ってきたのはこの言葉だった。

人をかきわけ、見える位置に到着し、目を凝らした。


見ると襟首を掴まれ持ち上げられた20代の青年。
そしてそれを簡単にやってのけているのが、赤い髪の、レッドと同じ年頃の少年だ。


「なめてんのか?お前、許してもらえるわけねーだろーが」


赤い髪の少年は青年の首襟を捻り、首を圧迫した。
青年は苦しいので赤髪を蹴るなり殴るなりするが、頑丈だった。

まるで痛がらない。


赤い髪の少年の身体は凄い。

身体中は傷だらけで、鍛えぬかれた筋肉だった。
鎧のように堅そうだ。
傷は刀のような鋭利な物の跡。それは、酷いであろう物もあった。
死線を何度も走り抜けたかのようなイメージを受ける。




問題とするなら…

身体中の傷や筋肉がよく見える事…。


上半身は裸だ。


冬なのに寒くないのだろうか。





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