┣そよ風の物語(小説
□そよ風の物語…
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「ちょっと!やめなさいよ!」
注意をしたのは小さな少女。
勇敢な少女だ。
相手は、喧嘩も凄く強いであろう若い男。
傷だらけ筋肉質で痩せている露出狂…と言うと危ない人にしか聞こえないが。
そんなワケもわからない男に言葉をかけるだけでも勇気がいるだろう。
相手は容姿こそ変だが、明らかに怖い人だ。
それを仲裁に入るのだから凄く勇敢だ。
勇敢勇敢。
それが隣にいる喧嘩王のお姫様でなければ白髪のレッドもさぞ感心しただろう。
今日はこれ限りだという約束は即効忘れているようだ。
そしてもはや白髪にも他人事ではなくなっている。
のん気に他人事風に考えている場合じゃない。
お姫様のエリザが自分から危険に飛び込んだも同然だ。
衛兵として護る事は最低限の仕事…ということだ。
たとえその身を滅ぼそうとも。
「あ?どちらかっつーと俺が被害者だっつーの!」
赤髪の男がエリザ姫を怒鳴る。
持ち上げられた男は未だ持ち上げられたままだし、苦しんでいる。
窒息死の心配はなさそうだ。
「どういう事?」
エリザ姫は訊いた。
普通、苦しんでいる男を助けるべきだが、もう目的を忘れた様子だ。
「姫…、下がって…」
レッドがエリザ姫の前に出た。
レッドも死線はいくつか越えてきている。
少なくとも相手が危険であることを察するくらいは出来たのだ。
…
赤髪は相手の襟の手を放した。
相手は尻餅をつくが、
落ちているナイフを拾って即効に逃げた。
どうやら赤髪の言うとおり、被害者は赤髪だったようだ。
通り魔にでも襲われたのだろう。
それを拿捕して締め上げていただけのようだ。
逃げる男なんてどうでもいいなんて顔で赤髪はこちらをみている。
逃げられたのでも、逃がしたのでもない…
どうでもよくなったとでもいうように。
赤髪の少年は、レッドを見る。
なぜか動揺しているようだった。
まるで珍しい宝石でも見つけたように。
長年探し続けた宝物をみつけたかのように。
そして同時に、レッド自身も何か思い出しそうだった。
何処かで会った事がある。
どこか懐かしい気がする。
「ぁ…」
「レッド!レッドだな!?」
レッドと赤髪が同時に口を開く。
赤髪は叫んで発言したため、レッドはついつい発言を止めてしまったが、
「あぁ…。アルガ」
そう一息いれて返事をした。
レッドも驚いている。驚くと言っても、少しだが。
「探した…」
赤髪のアルガはそう呟く。レッドは笑みを浮かべ、
「俺もだ」
と返した。
ギャラリーも飽きたのか、大半がもう何処かへ散った。
少しの人数を残し、その場の騒ぎは自然消滅となった。
「誰?」
エリザがレッドに不思議そうに訊いたのは、少し経ってからだ…
…