┣そよ風の物語(小説

□そよ風の物語…
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少し時が過ぎると人もまた元のよう、あわただしく歩き出している。
先ほどまで立て続けて騒ぎがあった形跡など微塵ものこっていなかった。



「誰…?」


エリザ姫は不思議そうに訊いた。
赤い髪と白い髪の少年達は雑談を止めた。


「ん?あぁ…、さっきのお嬢さん…」


赤い髪の少年はエリザ姫を見た。
どうでもよさげに見ているのだか、本当に興味なさそうだ。
別にロリコンとかの話でなくて、相手が何者でも別に知らない、構わないという意味だ。

それに、“お嬢さん”と口から出ること自体が以外に感じられる。
どう考えてもそんな柄じゃない…。


アルガに見られた時にエリザは恐怖を感じた。
正直に赤い髪の男が恐いと思えた。

何故かはわからない。外見も身体も、確かに強そうで恐いが、
見た目は関係なかった。

そう、見た目ではない…
何か別の物…


「姫。この男は私の戦友でした。親友と呼ぶべきな程でして…」


レッドが説明をしてみたが、エリザは聞いていなかった。
赤い髪のアルガと目が合ったまま硬直している。

無視されたので、レッドは少し落ち込んだ。
落ち込んだ上に、少し呆れた。

普段は人の話を聞かない子ではないはずなのだのだが、
我を忘れると何を言っても馬の耳に念仏の如く、
エリザ姫は何にも聞いてくれなくなってしまうのだ。
悪い癖を直さなければならないな…と、そんなことをこの状況で考えて、肩を落とす。


「グレン…」


エリザが急に白髪のレッドの顔を見た。
レッドは慌てて返事をする。
「はい?」という声が裏声になったが誰も気にしないまま流される。


「この人誰?」



今度はレッドが硬直してしまった。
説明をもう一度繰り返さなければならないと言う事よりも、
訊いておいて聞かなかった癖に更に訊いたわけだ。

そりゃ怒りたくなる。表情は唖然だったが。

しかしその考え自体大人気のない事だと思えたレッドは深呼吸した。
しかし少しいらだった様子で話す。
怒っていることなど今のお姫様は気付きもしないだろうが。


「古い戦友です。私の親友です」


淡々と述べたが案の定、彼の苛立ちをまったく察した様子もない。
「へぇ」と一言だけ返ってきただけだ。


「レッド…」


次は赤い髪、アルガがレッドに訊いた。
流石に苛立つ様子のレッド。今回は返事もしないで顔だけ向けた。


「“グレン”って…なんなんだ?」



レッドは血の気が引いた様子で、再び固まった。





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