┣そよ風の物語(小説

□そよ風の物語…
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「…」


レッドは非常に困ったような顔をした。
実際非常に困っているわけだが…。

現在の表情を説明るるなら、顔を歪めるわけでもなく、
眉をひそめるわけでもないが、

無表情に近いその表情なのだが、
それでも困っているような。
説明するには難しい顔で困っている。


「グレンは名前よ?あなた友達でしょ?」


エリザがレッドの代わりにと、説明をする。


「コイツの事だろ?レッドって名前だ」


赤髪のアルガはエリザに対して強めに返した。

こんな意味不明な状態にした要因はレッドにあった。

エリザにはグレン…
アルガにはレッド…

レッドが正式だが、“グレン”と名乗っているのだ。
そして理由もある。

そう…
理由がある…。


「“レッド”…?聞いた事のある名前ね…」


エリザが首を傾げた。
まるでどこかの探偵みたいに、手の上にあごをのせている。


「…。レッドは何の仕事してるんだ?護衛?」


アルガが無造作に聞いた。

そうそれ。
それ重要…

お前が言うともう無邪気には見えない。
まるで俺を貶(おとし)めてやろうという行為にも思える。
もうお前に対して、殺意すら感じる…(オチツケ


「グレンは私の護衛かつ国王直轄の親衛隊長よ」


エリザがまるで自分の事のように言った。
無邪気に言う彼女を見て、レッドは責める気にも、何かいう気にもならなかった。←この差重要

偽名を使う理由など、王族直轄の護衛兵、しかも隊長という時点で不思議ではない。
何故なら過去を知られたくないだとか身分を隠すとか、
そんな現状維持のために嘘をつくくらいする人間は山ほどいる。

だが、レッド自身は少し違っていた。
彼自身の保身な考えもあるかもしれないが、
根本そうさせるのは身分柄ではなく、
この場にいるお姫様に対する偏見の除去が目的だった。


「姫…様」


レッドは、うつ向いたままエリザに話しかけた。
エリザはその小さな声にしっかり反応した。

その動作は、ほんの少し動いただけにすぎない。
首を、目を、レッドに向けただけだ。

しかし本人は黙し、目を反らし、沈黙と共に皆固まる…。

それも数秒だったのだろうが…。


「グレン…?」


エリザが駆け寄る。
身長の低いエリザ姫は近づくだけでレッドと目が合う。
そしてレッドは目を放すことはなかった。

エリザも放さない。


相反するが、共に勇気を出していた。




「話します…。全て…」


彼が声を出した。
いつもとは少しだけ違う声質で、恐いくらい落ち着いて…。

その変化が、重い物を今から吐き出して伝える覚悟を決めた者によるものだと、
エリザも察しがついた。

とてつもなく重たい物が来る…

そう思ったエリザは、つばを呑んで、口を固く閉じ、頷いた…




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