┣オレンジファンタジー(小説

□オレンジファンタジー第一話
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ここは普通の世界ではない。

まるでファンタジー世界。
空にドラゴンが普通に居るし、モンスターだって居る。
人々は魔法を使るし、獣人もいるし、

そう、ゲームでは割と有り触れた設定の世界だ。

そういう世界なのだ。


そしてここは喫茶店、ブルーベア。
営業時間中は必ずといって良いほど、ピアノの音と騒がしい人たちの声が絶えない。

今日も快晴であり、平和である。


「ぎゃあああ!!!!」


そんな声がその喫茶店から聞こえた。
内部は木造で、中は本格的なバー。

そこにはその声に驚いた10代後半か20代前半のバーテンの女性。
次に無視して優雅にピアノを弾く10代後半の女の子。

そして客イスに座る、10代中盤の少年の姿が2人見れる。

叫んだのは身長の低い、この少年だろう。


「姐(あね)さん!なんすかこれぇ!」

「見ての通り、ブレンドしたお茶」

「ジャパン茶と紅茶とレモンティを混ぜるバーテンが何処にいるんすかぁ!!」

「ここに居るじゃない」

「姐さんを除いてだよ!!」


軽装な防具をつけた少年は、その装備やらをガタガタ揺らしながらジェスチャーしている。
特に意味の無いジェスチャーだ。
バーテンの女性は特に何のリアクションも無いが、ジェスチャーする少年の目の前、どちらかというと青年は笑っている。


「はいはい、正義のなんでも屋がこんなことで騒がないで」

「正義・・!そうだな、俺は正義の味方だからな!」


こんな言葉で納得する馬鹿である。
バーテンの、姐さんと言われた女性は仕方なさそうに普通の飲み物を出す。


「あ!オレンジジュースじゃん!!」

「ジャックの好物よね、それ」

「俺はジョ・・!!・・・えっと」

「貴方、自分の名前すら忘れたの?周りから弄られてるからって…」

「俺は物覚えは悪い方なんだよ!!」

「自分の名前でしょ!?」


口を膨らしながら、少年はオレンジジュースを飲む。
ストローでちゅーちゅーするあたり、可愛いものである。


「貴方の名前はジョン=オ=ラルクでしょ」

「そう!それそれ!」


呆れを通り越して怒りを覚えたバーテンの女性はゲンコツを少年に食らわした。青年は大笑いである。
今殴られた少年の名前は、ジャン=オ=ラルク。
よくジャック=オ=ランタンとか言われる悲しい子である。

更に頭が絶妙に弱い、悲しい子である。

そして大笑いしている青年はバーロー=オイヨイヨ。
酷い名前だが、弄り始めたら永久に終わらないため、顔見知りにはもう触れられもしない。
ある一種の禁句である。

だが彼自身はこの名前を気に入っている。


「でさ姐さん、何か依頼ない?」

「来てないわよ。というか、依頼集める仕事場じゃないわよ、ここ」

「でも姐さんの所よく依頼来るじゃん?」

「貴方達の所為よ」

「なんだよwwジョンだけでなく俺も原因の一つかよww」


バーテンの彼女の名前はブルーベア。
それが本名なのかそうでないのかは、未だ謎である。
更に年齢も不明である。

ちなみに奥にいる女の子は別にここの店員というわけでもない。
更にブルーベア以外は名前も知らないという、かなり謎な少女である。

というか、ブルーベア以外は喋ったこともない。

いつの間にか店でピアノを弾いていて、いつの間にか姿を消すのだ。

※これから先、かなり先の未来で、このピアノを弾いている少女の年齢が8歳である事が発覚します。


「自分で収集しようとしないわけなの?」

「でもさ、でもさ!正義の味方は動かないっていうじゃん!」

「動かなかったら正義でも何でもないわよ」

「ちっげぇよ!!」


イスの上に立つジョン。


「正義の味方ってのは、「助けてー」って声に反応して駆け出すんだ!自分から困ってる人を探すかってんだよ!!!!」


そういった瞬間、彼が立っていたイスの足が折れ、彼は地面に叩きつけられた。
ブルーベアは別になんとも思わない風に、グラスを磨き続けている。


「イス、直しといてよね」

「へ、へ〜い…」

「なはははははははwwwwwww」



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