┣そよ風の物語(小説

□そよ風の物語~同時進行のもうひとつ~
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ローズは、煙草を吸うばかりで寝ていなかった。
気がつけば、朝になっていたというくらい、ボーっとしていた。


「ローズさん」


眠さも皆無のローズは振り返る。
声に聞き覚えがあるといえばそうだが、
誰かは知らない。


「…、なんか用か」


見ると2等兵の格好をした男が経っている。
笑顔で、まるでレイスみたいな奴だ。


「なるほど…、私を2等兵扱いしないんですね」


彼は嬉しそうに寄って来る。
ローズはただ、彼を眺めていただけだったのだが。

ローズは前を向きなおした。


「まぁぱっと見だが、
 どう考えても、レイスクラスの人間だからな。
 ま、俺のほうが強いけどな」


煙草を海へ投げ捨てながらローズはそんなことを言って格好をつけた。

男は感情のない笑顔を、いつまでも向けている。


「ローズさん、レボル様が貴方をお呼びしろと言っておりました」


「あ?レボルが?」


「えぇ。どうぞ、ご案内いたします」


ローズは、先導しようとするソイツの首襟を持って止める。


「いい。この船の構造は覚えてる」


まるで“邪魔するな”とでも言いたいかのように、
脅す気満々の声と顔を近づけてそう言った。

流石に男も笑顔を忘れて呆然と見ている。


首襟をゆっくり離してやり、
ローズはサクサクと歩いていった。


「…、ま、待ってくださいよぉ」


何とも弱々しい声をあげながら、男が後をついていった。



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