┣短編小説

□オルゴールのレクイエム
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私は死ぬのだ…






頭にはあの歌が…
オルゴールと共に聴こえる…






戦場に赴く前だ。

私は彼女に告白した。

歌が上手く、綺麗で気のきく人だ。

彼女は顔を赤い薔薇色に染め、

なんと了承してくれた。

至福に包まれたが、
戦争は待ってくれない。

時は残酷に過ぎる。







戦場で雨に濡れ

顔や服、銃を泥に染めて、

走り、撃ち、隠れ、戦った…






あぁ

目の前で味方が撃たれた…




彼は立ったままだ…

……オルゴールが響きだしたのはこの時だ……

頭を撃たれ、脳が剥き出しだ…

何故生きている…?

何故立ったまま…
生きているのだ…?




何故こちらを見る…

どうして倒れない…?





ほんの数秒に違いない。

だが、長かった…

あまりに長く感じた…





そして急に彼は

壊れたかのように

泥に顔を沈めた…






彼には何が頭によぎっただろう。

私みたいに歌とオルゴールではないにしろ、

私みたいに何か思い出し、何か考えていたのではないだろうか…






神が居るなら今奇跡を起こし、

私を助けて下さる筈だ…

けど…

神など…天使など来ない…






神は私を見捨てたのか…


善をもっとうに生きてきた私は、


要らぬ存在ですか…


この女神の歌とオルゴールは…


何故止まらず鳴り響く…?






あぁ


私は死ぬのだ…


止まらない歌のお陰で

私から恐怖は消えた…

もう良い…

せめてオルゴールよ…

止まらないでほしい


私や仲間を癒す歌を唄い続けてほしいのだ…






あぁ…

もうなにも聞こえない…
銃砲の音も、上官の声も…









神など居ないのかもしれないな。


人がこのようなときのためにも…

希望を失わないよう…

創られただけの…

逃げ道の…

存在…







…悲惨だな…。

救われない物を信じて死ぬやつも居る…


いや、信じていたほうが楽かもしれない…

嘘…、が、いいことか…


偽善じゃなければ…





私は…











…あとがきは次のページ
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