┣短編小説

□何かが違うとダメなんて…
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飢えに苦しんでいた村の住人は、
王族を恨んでいた。


それを知っていて、少女…姫はここを避けてはとおれない…
いや、避けず通ると心から誓っていた。




誰かが投げた石…。

その石が少女の頭に当たった。

大きかったからか、そこから血が出ていた。


石を投げた人間を、少女はしっかりと知っていた。
見ていた。投げる動作を。顔を。

そして、避けなければあたるということもよくわかっていた。

あえて、避けなかったのだ。


少女は、その人が投げたときから、石があたっても、今現在も目を離さなかった。
絶対に。

相手はそれを見、なんだか怖くなってしまい、
後ろへと逃げるように隠れてしまった。



「姫!!」


護衛の少年が駆け寄った。

ハンカチを取り出し、怪我した部分から出る血を止めようとした。
しかし少女は止めた。

笑顔で…。


「悲しいね…。

 私が王族でなかったならば、
 あなたは、石なんて投げなかったんでしょうね」


堂々、しかしどこか※謙遜(けんそん)としている少女に対して、
既に罵声を浴びせるものもいなかった。

厳格というものと、気品というものに負けたのだ。


「石当てた奴…、出て来いよ…」


護衛の少年は怒りに満ちた表情でそういいながら、
集まっている群衆に殴りこみにでも行くかのように歩いていこうとした。

少女はそれを、全身全霊で止めた。


「ちょっとッ!!まってよ!!!」


「しかし姫…、」


少女は悲しい顔をしていた。

誰もそれを見ていたわけではない。
今、護衛の少年の胴にしがみついていて、
見ることなど出来ないのだ。

しかし、どの人も、
それがわかるほどにも、少女の声は、

気持ちがこもっていた。


「ダメ…、止まって。」





続きます。

※謙遜=けんそん…へりくだること。
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