┣短編小説

□黒い扇子
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非情の私は

命という名の“的(まと)”を躊躇無く打ち落とした



変な形をした…ただの的。

私の獲物…



殺しは私を造り

私は殺しを支える



弾を当てればきれいな花が咲くもの

お花はきれいだと思わない?



用はこれはゲーム

私はあの的よりも先に花を咲かせなきゃならないの

そうすれば花を見れるの



自分の花は見れないから



花が開けば、それはすぐに枯れてしまうの

だから

もっともっと撃たなきゃならない

もっと

私は美しい花を

散る様まで見ていたいの







わたしは黒い扇子を見た


黒い扇子はわたしを…


すばやい扇子は私を追いやったの





ゲームに負けたのだから

今度はわたしは的になる番なのね



きれいな花を咲かせてちょうだい









黒い扇子は次第に
形を変化させていった。


見れは黒い服をまとった人間…


扇子にしか見えなかったのに…


扇子という、ただの的だったはずなのに…









他の的も

人間へと姿を変えてしまった


“的”でなくなったそれが

私を睨み付けて

私を締め付けた



黒い扇子は…

私を哀れむ眼を見せた









即座に黒い扇子を打ち落とした



きれいな花が

これほどきれいなものがあるだろうか



黒い扇子に戻った的は

わたしに幸せを運びにきてくれたのだ









黒い扇子が
頭から離れない…

離れなくなってしまった…



黒い扇子が

この的が花開いて散った時に

とてつもなく大きな穴がわたしにも開いた。



大きな大きな…



お願いだから…



わたしの前へもう一度…










もっと“あなた”を“殺させて”!!!!



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