┣短編小説
□My Guitar
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まだ上手くないギターを、
友人が弾いていた。
それなりに弾く彼のその姿は皆の注目を惹き、
既にクラスの人気者となっていた。
授業で、ギターの練習をさせられた全員には、
たった短期間の練習だったとはいえ、
ギターの難しさを過大に感じながらも知っていた。
だからこそ、彼は一層注目を惹く。
周りに集まる中には、
若かりし頃の俺も居た。
たったGとCとAmとEm。
順番とストロークを変えただけの、変哲もない曲。
1年も経った俺には、今思えば“たかがその程度”だと思えるのだが、
当時の俺にはそれが格好よく見え、そして音色は美しく聞こえた。
ギター独特の、あの響き。
指で何本か押さえてピックで弦を振るわせれば、音が出る。
俺の興味を湧かせるのには、十分すぎた。
『あぁ、ギターを弾いてみたいなぁ。彼のように。』
それは誰もが思ったことかもしれない。
でも、それをきっかけにギターを現在も続けているのは結局、
弾いていた彼と、俺くらいなものだ。
あの時だ。
若い俺は、目前でギターを弾く彼の姿を、
網膜が焼けるほど目に焼き付けようと努力した…。
だから現在に至るも、俺はギターを弾き続けられた…。
…