┣短編小説

□子どもの喧嘩
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「ごめんね…」


そう呟いた時にはもう、
空から雨が降ってきそうな雲行きだった。


そこはいたって普通で、
特徴なんて何もない公園。

普遍的過ぎて、寂しい公園。


そこに、二人の少女が居た。


一方はしゃがみこんで、
一方は、立ち尽くして謝り続けていた。


「大切だったのに…、なんてことしてくれたの?」


しゃがみこんだ少女が手にするのは、
さほど大きくない、小さなペンダントだった。

値段も、100円程度だろう。
だが、彼女にとっては大問題なのだろう。


「ごめん…」

「ごめんじゃすまないよ!!」


しゃがみ込んだ彼女は怪我もしている。
遊んでいるうちに、
転んだりしたのだろう。


「ごめんじゃこれはなおらないでしょ!?
どう責任とってくれるのよ!!」


「…ごめん」

「ごめんじゃないよ!!!!」


正論。
だが、容赦なさ過ぎる正論。

一方的すぎて、
割が合わない。


「ごめん…、新しいの買うから…」


「同じのはないよ!!!」


立ち尽くす少女はワンピースを握り締める。


「ごめん…」


「…」


「ごめん…」


「…」


「ごめ…」

「うるさい!!!!」


そんな大きな声が、
ワンピースを握る彼女を驚かせた。

ビクッと、体を震わせ、
顔をその声の持ち主に向け、
目を見開いて、見るだけ。



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