┣短編小説

□愛していました
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愛していました

世界のどんな人よりも



だけれど、

だからこそ、

私は貴女のそばに居るわけにはいかない



優しさや愛情だけで

独りよがりの感情だけで

愛する貴女を汚してはいけない

貴女の愛して止まないその人の邪魔をして

貴女が傷ついてはいけないから

私が負荷に変わってしまうから

私が貴女を

そのうち傷つけてしまうだろうから




なんて私は汚いのか

なんて私は不器用なのか

なんて私は自己本位なのか


貴女を好きならば私は本来

感情を我慢して、貴女をただ見守って、貴女の幸せを導き出せばいいはずなのに

私は

また

傷つけた

私すら

傷ついた


馬鹿だ

成長なんてしていなかった

思い上がりだった

馬鹿だ

馬鹿過ぎる

私は醜すぎた

心が黒くなりすぎた

こよなく貴女に惹かれすぎた

眩しくて

目が眩んで

手をのばすしかできなくて

その手も空を掴み

幻想だと気がついて

私は深く鋭くえぐられた


生々しく


痛々しく




だから貴女に爪を立てた

二度と私が貴女と関われないように

甘い琥珀色の飴とともに

うっすらと

皮だけ裂くような傷を

贈った





もう関わらないでほしい

希望を与えないでほしい

貴女の声を聴く度に

私は自らの胸を引き裂きたくなるんだ


もう関わらないでほしい

絶望を与えないでほしい

貴女の弱さを知る度に

私は自らの首を落としてしまいたくなるんだ


身が持たない

貴女の身も

私の身すらも


誰か


私を貶めてくれ

もう二度と光を見たくなくなるくらい

無妙の闇へ

私を堕ちさせてくれ


堕ちたい


闇に



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