┣短編小説

□背を向けた少年と少女…
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少年は少女に人として認められた事が嬉しかった。

背中の傷など気にもとめず風邪の心配をしてくれた事に、
異常なまでの暖かさと、胸の痛みを感じだ。














“ヴァーチュ… 来てくれたんだ…”


次に出会った時に、彼女は瀕死だった。



内乱に巻き込まれた少女は、血まみれだった。




よく覚えている…。
痛いくらいに。


全てを覚えている…。


貫通した刀は、そのまま少女に刺さっていた事に、
少年は介抱される時に初めて気がついた…。


少年は少女の裸を見た…。

欲情?女性の裸が、酷いトラウマになってしまっただけだ。


刀を抜く前は、痛そうでもなかったのに、
抜こうとすれば、泣き叫んだ。


“痛い…っ 痛いっ!”


少女は、恥じらう事すら出来ず…、
少女は、痛みに耐えられなかった…。

身体は耐えられる…。

しかし心は、折れかけた…。




広がった傷は、少女を苦しめた。

包帯から、血がにじみでるのが、見ていてよくわかった…。





少女は痛みから涙を抑えられなかった。
少女は痛みから顔を歪めた。
少女は痛みから汗をひどくかいていた。
少女は痛みから必死に手を額に当てた。
少女は必死にも泣きながら、少年を見た。


苦しみぬいた少女の…、最初で最後の願いを…、
少年は聞いた。




『痛いよぉ…、ぉ…、殺して…、ょ…ぉ…、お、願いだから…っ』


今にも心の折れそうな少女へ、少年は非情にも
自己本意の考えを少女に伝えた…

少年の涙が、少女の顔に降り注ぐ。



『生きてよ… 生きてよぉっ!!』



少女は、その言葉で死ぬ事を諦め、生きる覚悟を決めた…。


ただただ…、痛いと叫んで泣いた…。





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