┣短編小説

□何かが違うとダメなんて…
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少年が一歩、二歩と退いていった。

少女は手を離して、その様子をみていた。


「私は王族…。それは変えられない事実。

 王族は戦争を止められず、結果がこの有様。
 あなたたちが恨んでいるのは無理もないことなんでしょうね」


血をそのままにした少女が笑顔で振り向いた。


その笑顔は、馬鹿にしているという笑いではなく、
敵ではない、仲間であるということを象徴しているものだった。

しかし、笑顔は急に消えた。


「もしも私が、もしもの話で、私が…さ、

 あなたたちと同じ立場だったならさ、
 友達になれたのかな…」


周囲はざわめいた。

その一言が、大人たちに恐ろしく重たくのしかかったのだ。


「私は、少なくとも友達になりたい…。
 あなたたちと親しくありたい…。

 でも、王族だから皆は私と友達になんてなりたくないって思うよね。
 親しくなんてなりたくもないって、思うでしょうね」


それは差別だと、遠まわしに言っているのだが、
周囲はそれ自体には気がつかず、ただ、少女を見ている。


「私が、庶民の生まれだったなら、
 みんな、私を友達にしてくれたんでしょうね…」


…。


「“違うとダメ”だなんて、

 ねぇ…、何かが違うとダメだなんて、

 不平等よね!!?
 悲しいことよね!!??」




「不平等なのは生活だべ。お前こそ不平等の元だ…」


「こんな世の中…、あってほしくないのに…、悲しいね…」


誰もが、うつむいた。
無言になった。

演説などの域ではなかった。



「行こう?ここに私たちの居場所はないわ…」



少女は、成し遂げた顔をしているわけではなかった。

目は今にも涙がこぼれそうだ。


「…。はい」


護衛の少年は、村人たちへ一礼し、歩き出した。


村人たちは唖然としていた。



…次はあとがきです
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