etc.

□彼と彼女の関係 -彼の理由-
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「キラさんは、ラクス様をどうして好きになられたんですか?」
「え?」

 偶然食堂に居合わせたキラさんにそう訊ねると、昼食のトレイを持ったキラさんはぽやんとした顔で私を見た。
 なんだか似たような表情を、ついこの間見た気がする。

 しばらく私の言葉を反芻していた彼は、席に着きながら笑んで答える。


「別に特別な理由なんてないよ」
「え? そうなんですか?」
「うん」




「ラクスがラクスだから、好きになった」





「それだけだよ」




 揺るぎない綺麗な笑顔と理由に、瞬きも忘れて彼の顔を見てしまう。
 ……何故だか、物凄い告白を聞いてしまったような気分。
 考えれば考える程、単純なんだけれど、深い理由。


「キラ」
「ラクス」

 食堂のドアがスライドして、入室してきたラクス様に気付いたキラさんは笑顔のまま彼女を呼んだ。
 まばらな人の間を縫ってやってくる彼女に向ける目は、すっごく優しい。
 キラさんは誰に対しても優しい目をしているんだけど、もっと深みのあるような。
 温かさを増したような、柔らかいまなざし。

 二人の邪魔をするのも悪い気がして、丁度食べ終わったからと席を立ち、ラクス様にそこを譲った。


「有り難うございます、メイリンさん」
「有難う、メイリン」
「いえ。こちらこそキラさん、有り難うございました」
「うん、どういたしまして」
「では、失礼します」


 お辞儀をして空になったトレイを片付けにいくと、後ろで二人の話し声が聞こえる。


「何をお話しされていたんですか?」
「内緒」
「あら? 私には言って下さらないのですか?」
「うん。ラクスには内緒」
「まぁ、酷いですわ」
「ふふ」


 楽しそうに話すキラさんも、ちょっぴり不満そうに眉を曲げるラクス様も、やっぱり幸せそう。

「あーもう、当てられちゃうな!」

 遠くから見ていてもラブラブな二人に肩をすくめつつ、笑顔になってドアを抜ける。


「私も、頑張ろっと!」


 両拳に力を込めると、勢い良く廊下を駆け出した。




END
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