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□蛇眼の武王と翼持つ者の邂逅
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己が選択を間違っていたとは思わない。
そうでしか手に入らなかったものがあるし、それで生まれたものもある。
では俺の選択に__あの出来事は必然だったのというのだろうか。
冬の澄んだ冷たい空気が窓から入り込み、室内を満たそうとする。
聖王国ルーンベールの若き王、カイネル・フランベルジュ・ガルディ二アス十四世は、本を手に椅子に腰掛けていた。
公務を終えた彼は、一日で唯一の自由時間を過ごしていた。
壁には独特の形状の剣、東の国で言うところの刀が掛けられており、蝋燭の明かりに底光りして定期的に手入れされていることを窺わせている。
机の上には、先刻女官が運んできた妹からの封書があった。
“兄さん、お元気ですか?
リーベリアは三つの塔の機能が思わしくないようで、天候不順が続いています。
昨日お母様の研究所跡地を調べた所、人のいる形跡がありました。どうやら古代兵器を悪用している者がいるようです”
丁寧な筆跡でしたためられた文章を見て、カイネルは左右で違う色の瞳を細めた。
気になることがあるからリーベリア地方へと赴くと、彼の妹であるアイラ・ブランネージュ・ガルディ二アスが告げたのは先日のことだった。
その時のカイネルは、かつて言ったように彼女を引き留めることはしなかった。
ただ無事で帰って来い。その一言を言っただけだった。
全てを知りつつも自分を送り出してくれる兄に、彼の妹は彼の右目と同じ赤い瞳を細め、ありがとうと笑った。
女一人の旅は正直心配であったが、懇願されていたら恐らく負けていただろうとカイネルは思う。
妹に弱い事は自覚している。