etc.
□似ている人
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エルウィンが精霊の力を借りて飛ばした矢文が、空に消えてから随分経つ。
「………お前の仲間達は、来るだろうか」
ブーツの澄んだ靴音を響かせて、ブランネージュはソウマが腰掛けていた戦車へと寄った。
神秘的な赤い瞳は、ソウマのものと同じ様に空の彼方を見ている。
「きっと来るさ。皆意地張ってても、根っこの部分は変わってないからな」
「だがこの間の様子では、双方自分達が正しいと思っている。…ああいうのは厄介だ。どちらの主張も筋が通っている以上、議論しても堂々巡りで決裂しかねんぞ」
「…かもな。でもこの際、腹を割って話すのが大事だと思うんだ」
最もな彼女の意見に苦笑を浮かべつつ、ソウマは両手を頭の後ろに持っていきながら続ける。
「あいつらは国とか戦争とかの柵に縛られて、あいつら自身の、本来の願いが見えなくなってる。そういう枷を取っ払う役目は、どこにも属してない俺しかいないだろ?」
ブランネージュは暫く、通り名の通り氷を思わせる視線をソウマに注いだ。
甘いと言われるだろうか、なんて思いながら、ソウマは彼女の反応を待った。
「……貴方をゼロが選んだの、わかる気がするわ」
すると、雪解けのあとの花のように、ブランネージュは微かだが口元を綻ばせた。口調が変わった彼女に、ソウマは目が点になる。
「…そりゃどういう意味だ?」
「似てるのよ。貴方とゼロ……いえ、シオンって」
意外そうに、ソウマはブランネージュを見返す。短い付き合いだが、彼女がこのような話をするのは珍しいことに思えたのだ。