etc.
□あの人の印象
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日中と寒暖の差が激しい、砂漠の夜。
細かい砂の粒子で軋む髪をぼんやり気にしつつ、キラは夜風に吹かれていた。
宇宙用の戦艦のデッキには、彼の他に誰もいない。
「…しずかなー…この夜に……」
頼りない声で、一度だけ聞いたことのある歌をキラは口ずさんでみた。
覚えていた歌詞は朧げであったが、彼女が歌っていたメロディは優しい響きを持っている。
記憶の底で桜色の髪が舞った。
“でも貴方が優しいのは、貴方だからでしょう?”
全てを包み込むような声で紡がれた、少女の言葉が耳の奥で再生される。
知らずキラは、小さな笑みを浮かべた。
アスランの婚約者なのだと笑った、春風のような暖かさを持った人。
ありのままの自分を受け入れてくれた彼女との時間は、思いがけずキラに癒しを与えてくれた。
無重力でふわふわと揺れる、ウェーブのかかった髪と同じ色のロボットを連れたあの子は。
今日も宇宙(そら)で、平和の祈りを歌っているのだろうか。