etc.

□太陽の名
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「んじゃあ、明日の午後二時!落ち合うのは今日と同じ場所ということで」
「わかったわ。宜しくね」
「そりゃもうあやせさんの為なら!君島邦彦、一世一代の働きを見せますよ〜」

 意気揚々とポーズをとってみせる青年に、あやせは硬かった表情を少し綻ばせた。君島は調子の良い男ではあるが誠実で、仕事に関しても評判は確かだ。
 ただ一つ、彼女には懸念事項があった。

「君島君、一つ聞いてもいいかしら?」
「どうぞ何でも!」
「その助っ人という人、腕は立つの?」
「え?」
「君島君の友達を疑う訳じゃないんだけど…」

 やはり心配なのだと彼女は続けた。もしこの計画が失敗すれば、仕掛けた自分達だけでなく、捕まっている街の人達もHOLDに粛清されるからだ。
 すると君島は苦笑して言った。

「…ダチって程可愛いもんじゃねぇっスよ?」
「……そうなの?」
「ええ。すぐ人のこと殴るし、気に入らなかったら依頼人だってぶっ飛ばすし。
 『友達』みたいなやさしいもんじゃなくて、ありゃ悪友です。いや暴君!」
「ぼ、ぼうくん……」

 あまりの言い様に言葉を失ってしまうが、君島はふっと笑う。


「けど、バカみたいに真っすぐな生き方をしてる。自分の信念を曲げないで、それを押し通すだけの力を持った奴なんです」


 表情に隠しきれない、ほんの少しの憧れを宿しながら、君島はロストグラウンドの乾いた空を見上げる。
 本土に建つビル群の様に遮る物の無い空は、二人をただ見下ろしている。


「…あいつを見てると、アルターが使えない普通の人間の俺でも、何か出来るんじゃないかって思わされる。『何かしてみせる』って動きたくなる。俺が知ってる中で、一番強い男です」


 太陽の光が瞳を焼くのを厭わず、空を見上げるのを止めないで君島は言い切った。
 彼の眼差しに、導かれるように。気が付けばあやせは問いを紡いでいた。


「…その人の、名前は?」
「カズマ。シェルブリッドのカズマです」
「カズマ……」


 三文字の音の連なりを彼女は呟いた。風が言の葉をさらっていく。


「カズマ…シェルブリッドのカズマ…」


 それが一生忘れられない名前になることを、彼女はまだ知らない。



END
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