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□蛇眼の武王と翼持つ者の邂逅
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ずっと三人で生きるつもりだった。
魔術に精通した妹と優れた頭脳を持つ弟と、三人で国を統治していくつもりだった。
旅立ちの前交わされた約束は、どこで食い違ってしまったのだろう。
「いや…もう過ぎたことだ」
カイネルは声に出すことで自身に言い聞かせ、記憶を閉じた。
不意に、背中がざわついた。
咄嗟に壁の刀を掴み、構え、気配を探る。
生き物ではない。しかし、何かの気配が確かにある。
耳鳴りのような感覚が、身体に警告を促している。
室内は変わらず静けさを保っていたが 予感は更に迫ってくる。
眼前に電流のようなものが、ちり、と奔る。
「?」
四方に生まれたプラズマが、ちりちりと互いを結び合う。
それは一瞬の前触れだった。
ズンと体に圧力がかかり、部屋の中心に亀裂が現れる。
「!!」
黒い穴は、カイネルを飲み込むようにどんどんその口を開けていく。
「何だこれは!!」
カイネルは刀を支(つか)えにして引力の追随から逃れようとしたが、あえなく引きずり込まれる。
抗う間もなかった。
裂け目へ吸い込まれた彼は、どこにもない場所へと消えた。