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□蛇眼の武王と翼持つ者の邂逅
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いつかしら、意識がはっきりしていた。
何色とも形容し難い色の空間に、いくつも浮かぶ硝子の断片。
天も地も存在しない。
まさしく、混沌と言われる世界。そこにカイネルはいた。
「…どこだ…ここは…」
カイネルは呟いた。すると彼の前に一つの存在が生まれた。
「驚いたな…」
現れた人物から感嘆の囁きが零れる。
変声期を過ぎた、少し高めの声だ。
「君がここに来るなんて…」
カイネルの前に、大きな純白と漆黒の翼を持った、少年と言っていいくらいの男性が降り立った。
闇に近い紫の髪をした彼は、眩しい程に白い上着をはためかせながら音も無く着地した。
「ここは二つの世界の狭間。本来ならばアクセスが出来ない場所」
少年はカイネルを眺め見た。選別をされているようだった。
「…随分と心が揺れているね。それで君はここまで来てしまったのか。どうしてか…」
考えるように遠くを見ていた彼は答えに至ったのか、数秒後、納得したように瞳を伏せた。
「…ああ…彼の命日だからか…」
「…彼?」
少年の言葉の意味を汲み取れず、カイネルは聞き返した。
「君の弟。悪しき意思を封じた仮面の言葉に踊らされ、人としての幸せを見失った幼き王」
返答を得た己の眼差しが、剣呑なものへと変わるのをカイネルは感じる。