etc.
□幸せへのプロポーズ
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それは、オーブ国家元首がプラントに来訪し、最高評議会議長と会談をした翌朝のこと。
「ねぇ、ラクス」
朝食を終えて一息ついた頃、キラは唐突に話題を持ち出した。
大抵朝食のあと、キラはラクスを何かに誘ってくる。
それは散歩であったり、買い物であったり。日によって内容は違うが、どんなものであろうとラクスはいつも「はい」と笑顔で頷く。
良き友人であるアスランやカガリが訪問していても、そんなのはお構いなしだった。
『ねぇ、ラクス』
キラからそう言葉が出たら、どんなに些細な用事でも承諾してしまうラクスである。
ほぼ毎日繰り返される惚気に、二人の側近やアスランとカガリはもう馴れっこであった。
この日もそう。そんな見慣れたやりとりが行われる筈だった。
「はい」
「結婚、しない?」
がたんっ
マホガニー製の繊細な彫刻が施された椅子が、盛大な音と共に横倒しになった。
アスランである。
がちゃんっ
今まさに飲み干されようとしていた紅茶(フォートナム・メイスン)の注がれたカップが、茶色い雫を飛ばしながらソーサーの上に落ちた。
カガリである。
「キラ…いきなり何を言い出すんだ」
その場に会した一同の中、最初に我に返ったアスランが幼馴染の突飛な発言に突っ込みを入れる。