etc.
□エモーショナル・ミラーズ
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「平和の為、わたくしも頑張りまーす!!」
最初に彼女を知った時、正直あまりいい気分はしなかった。
幼少の頃から芸事を職業としている身であるから、人々から勝手なイメージを持たれることは理解していた。だがアイドルとしての偶像が先行した自分の姿は、ひどく滑稽にも思えた。
モニターの向こうには、雰囲気も曲調も何もかも違う少女の歌に、歓声を上げている沢山の人達。
世間に自分はこんな姿を望まれ、また見られているのかと思うと、怒りとも嫌悪感ともつかない複雑な気持ちを覚えた。
けれど、スポットライトとネオンの煌めくステージの上。
全身で感情を表現している彼女は
明るくて
楽しげで、
……魅力的で。
その素直な歌声は、歌うことが何よりも好きなのだと、言葉より雄弁に語っていた。
自分も歌は好きだが、それだけで歌っている訳じゃない。
歌うことは、軍人でも政治家でもない自分が、一人の人間として思いを発信するのに最も適した手段だ。
言うなれば、『出来る』から『する』のだ。極論だとそこに『好き』という感情は関係ない。
しかし、彼女が心から楽しんで歌う歌は、そこにいる沢山の人々を笑顔にしていた。
……けじめを付けなくてはならないことはある。
だけどいつか。そう遠くないいつかに。
自分と、よく似た顔の下にある
本当の、貴女に会いたい。
END