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□境界人たちのとある問答
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「…僕は彼とは違う存在だ。シオンは人間だが、僕は人間じゃない」
「人であるかそうでないかは、問題ではないわ」
青年の内心の葛藤を見透かしたかのように、女性は続けた。
「名前とは、周りとの関係性が作るものよ。ウィンダリアに流れ着き、彼に助けてもらった“私”はカグヤ。そして今、貴方の目の前にいる“私”はサクヤ。サクヤ・マキシマ」
確信を持った声音で言い切り、女性は黙って話を聞く青年を見つめ返す。
「そして、今の貴方はゼロ。人であるシオンの意思を引き継いだ、この世界を見守るもの」
古代人達の技術の結晶である、人の形をした神器。それが女性の正体であった。だがサクヤと名乗った女性は、人に限りなく近い面差しで青年に語り続ける。
「私のも貴方のも、運命は誰かに与えられたものだわ。けれど貴方の奥底にあるただ一つの意志は、貴方だけのものよ。私と、同じように」
ゼロと呼ばれた青年は苦笑し、肩を竦めた。
「……全く。君の周りは、面白い人物が多いらしいな」
サクヤはくすりと笑みを浮かべた。しかし程なく表情を変え、ある世界を見据える。
ゼロが訊ねた。