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□生まれた時からの絆
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かつて戦争中にキラを救ってくれた、彼女の開けっ広げな明るさはなりを潜めていて。キラは痛ましいような思いでカガリを見る。
祖国とそこに生きる人々の為、全てを捨てようとしたカガリ。不器用な彼が精一杯の気持ちを込めて選んだであろう指輪を、手紙の中に隠した彼女の苦悩をキラは改めて見てとった。
思い出されたのは、夕日に照らされたエレカーの中で、絞り出すように心情を吐露したアスランの姿。
「……ねえ、カガリ」
キラはあの頃より低い位置にある、カガリの肩に両手を置いた。
「幸せになることを忘れないで」
琥珀色の彼女の瞳を覗き込み、キラは言った。
「カガリはオーブの首長だから、国の立場とか国民の人たちの事とか、考えなくちゃいけないことが多くて難しいと思うけど。幸せな人にしか、幸せは作れないんだ」
言い募るキラの眼差しを、カガリは見つめ返す。
「自分が幸せになることを、忘れないで」
彼女の立場を十分に理解した上で、それでもキラはその言葉を伝えた。一人の人間としての幸せを、見失わないで欲しかった。
「キラ…」
目を見張っていたカガリは、どこか呆然とした様子で呟く。
泣きそうに瞳が歪んだかと思うと、キラの首に彼女の腕が回る。
頷くような、言葉を噛み締めるような仕草だった。
「ああ。……ありがとう」
少しくぐもった声と首に回された腕から、彼女の気持ちが伝わってくる。腕の力が、ぎゅっと強くなった気がした。