闇の誘う夜想曲
□〜小さな夜の歌〜
2ページ/5ページ
彼から優しさが消えて、もうどれ位経つのだろう?
かなりの時が巡った気がするが、私は未だに彼の側に居る。
何時壊レルノカ 暗闇デ怯エナガラ
物言わぬ聖女の語り
夜、用事で出かけていたシュリが宿へ返ると、シュラが寝ているはずのベッドがもぬけの空になっていた。
一瞬かなり焦ったが、部屋の奥の、割と広く作られた窓辺に寄りかかっているのを見つけると、シュリはほぅ、と安堵の息を吐いた。
ギシ…と、古い床を微かに軋ませながら、シュリはシュラに近づく。そして、声をかけた。
「シュラ…?未だ起きてたんだ?」
シュラはその言葉に振り返ると、窓の外に向けていた視線をシュリに向けて微笑みかけた。
しかし、その瞳はとても冥い。
「あぁ、シュリか。どうしたの」
無感動的な言葉が紡がれる。それはがとても心に痛い。しかし、シュリはいつも通りに微笑み返す。
「ううん、なんでもないよ…なにしてたの?」
「別に…なんとなく、空見てただけ」
そう言うと、シュラはゆっくりとシュリを抱き寄せた。シュリはされるがままになっている。
きっとこの動作もなんとなくだ、と、思いながら。
「風邪引くから布団で寝なよ?」
「判ってるよ」
拗ねた子供の様にシュラは答える。まるで中身まで子供になったようだ。そんな事を考えながら、シュリは空を仰いだ。
気づけばもう、シュラはすやすやと気持ち良さそうに寝息を立てていた。
シュリは、そっとシュラの頭を撫でながら、空を向いたまま瞳を閉じた。
「あぁ…星が綺麗だ」
シュラは、この空を眺めてなにを思ったのだろう。
やはり、この世界を疎み、消したいとしか思っていないのだろうか。
考えてもどうしようもない事は判っているが、そんな考えばかりがぐるぐるとしつこく頭の中を駆け巡る。
「…ねぇシュラ…私、何時まで綺麗で居れば良いのかな?」
哀しげに問いかける彼女の背中は、とても、痛々しい。
しかし、その言葉に答える者は誰も居ない。
「もう…汚れちゃいたいよ……」
夜の空気に嗚咽が響く。
しかしそれを聞くのは満天の星空。ぞっとする程に美しい、宝石箱の微笑みのみ。
近くて遠くて愛おしい
貴方のためなら私は死のう
何時も何所でも愛している
貴方のためなら傷つこう
貴方に「いらない」と言われるのが
一番怖い
「私もう、狂っちゃったのかなぁ」
気丈にも空に微笑むが、止める事ができない銀色の涙が頬を伝う。
夜風がそれをおもむろに撫で、過ぎてゆく。
____こうして 物言わぬ聖女はまた傷を刻まれる____
読んでくださってありがとうございます。本編は更新してないのにこんなもんばかり書いてすみません…u
でも多きっとこういうネタバレ短編とか二次とか増えるんだよねこのサイト。
こんな管理人ですが、見放さないでくださませ。