MP100

□光の先
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■ハロウィン
■パズル衣装のモデルさん達が可愛いかったからどうしても使いたかった
■年齢改変(パズル衣装組)






暗い、暗い世界が広がっていた。






(――…夢?)


辺り一面の闇なのに、恐怖心は何故か湧かなかった。






ぐるりと見渡してみても、何も見えず
夢なら立ち止まっていてもそのうち醒めるんだろうな…と、達観していた。










暗闇の中どの位そうしていたのか、




きゃらきゃらと、幼い子供の笑い声が聞こえて来た。






その声に釣られるように辺りを見渡せば、闇の中なのに、此処がレンガとコンクリートで挟まれた細い路地裏だと認識する。




片側のレンガの壁に手を触れれば、それっぽい感触が伝わる、


そんな路地のだいふ奥に居たらしいオレはゆっくり光溢れる路地の先へと足を向けた。
















***


「Trick or Treat!」


路地から顔だせば、何処かの街並み。
光と音と、人ならざる格好をした人々が楽しそうに踊り笑い、何処かへ向かっていた。




「Trick or Treat!」
腰にも届かない程幼い子供達がちょろちょろと、このパレードを眺め佇む大人に声をかける。


声を掛けられた大人は皆優しい笑顔で、子供達にお菓子を差し出している。






そんな光景を微笑ましく見ていれば、
小悪魔…だろうか、小さな蝙蝠羽を付けた少年と、狼みたいな耳と尻尾を付けた少年が互いに手を取り合いオレの目の前へとやって来た。






(兄弟かな)
見上げてくる双眸に柔らかく微笑めば、小さな2人は1度互いに顔を見合わせて頷くと


「「Trick or Treat」」


と、お決まりの文句を口にした。








「うーん、何かあったかな?」
期待する双眸に僅か眉を下げて、ポケットの中に手を突っ込む。


何か持っていた記憶は無い。
けれど、これが夢なんだろうという認識もあって…なら何か持ってるかもしれないと淡い期待もあった。




――…けど、


「ごめんね、持ってなかったや…」


触れるものの無いポケットの中から、手を出して謝れば


小さな兄弟は、再び顔を見合わせる。






「「じゃぁ、いっしょにいこ?」」


「え」


取り合っていた手解き、その小さな手が左右から取られ緩い力でパレードの中へと引き込まれた。






片側に小悪魔
片側に狼男


可愛い子供達は楽しそうに、オレと手を繋ぎまた佇む人達へとお菓子を強請ってゆく。




キラキラした華やかな世界、
皆が優しくて、楽しくて、


心がふわふわと温かくなる。








「楽しいね」
小さな2人にそう声を掛ければ、きゃらきゃらと笑い


「いっしょだから」
「ずっといっしょ」


そう返してくれる。




(うん、楽しいね。一緒でいいね)


何処かでオレの欲しかった言葉をくれる子供達の手を緩く握り返す。






「Trick or Treat!」
途中で出会った、魔法使いの格好をした男の子。
「お兄さん、これ美味しいよ?」


その小さな手から差し出されたのは、小さなクッキー。
「いいの?」
「うん」
「ありがと」
受け取ろうとしたが、両サイドを固める小悪魔と狼君は握った手を離してくれる気は無いらしい。


「――…」
オレの困惑と、両サイドの子供達を見て1拍置いた少年は


「じゃぁ、僕が食べさしてあげる」


と、まるで小さな子供にするように摘んで口元へと差し出されたクッキー。


「――」
多少恥ずかしさもあったけれど、そのクッキーを拒否するのも申し訳ないと腰を屈めて口を開く。




「――…ッ」
その直後、魔法使いの少年は踊り狂うバンパイアの男にぶつかられて持っていたクッキーは地面へと落ちてしまった。


「もう、無いや…」
落ちたクッキーを悲しげに見詰めて、魔法使いの少年はそう零す。


「ごめんね」
「ううん、お兄さんが悪いんじゃないんだよ?」
――…失敗しちゃったや。
そう零してその青い瞳に薄く膜を張りつつ、ふるふると緩く首をふる。


どうしようと思ったら、魔法使いの少年はバイバイと手を振り人混みに紛れ込んでいった。




「悪い事しちゃった…な」
先程の悲しげは瞳を思い出して、小さく呟けば両サイドの手がぎゅっと握られた。




「「だいじょうぶ」」


真っ直ぐ見詰める双眸に、そっかと笑いまたオレは2人と共に何処までも続くパレードに呑まれてゆく。
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