MP100

□光の先
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「満足したか?」
「――…エクボ…」


ふわりと背から大きなシーツが、被さりその中で逞しい腕がオレを抱きしめた。






「ったく手間取らすんじゃねぇよ」
「――…ふっ、ぅ」


その腕の強さと耳元で低く吐き出された苦言に、収まりかけた涙が再び溢れ出した。




「俺様と戻るか?――…それとも、逝くか?」
その声はさっき迄の苛立ちや苦言と掛け離れた優しい声。






「――…エクボの好きな方」


そう答えたら、チッと舌打ちされた。


「お前連れ帰らねぇと俺様がホントに『溶かされる』だろうが」
「ふふ、だろうな…」
「確信犯かよ」


まだ涙に濡れていた頬に、男のカサついた唇が押し当てられてその涙を舐め取られる。




「帰るぞ」
「ん」


ふわりとシーツが退けられれば、そこにもうあの華やかなパレードは無かった。


コンクリートとレンガの細道。




繋がれた少し骨ばった大きな手。
その手の先には黒スーツ姿の男の広い背。
男は光と逆の暗闇へと、向かい歩んでゆく。








もし、ホントは あのパレードが正解で
今オレの手を掴んでいるのが、偽物だったら――…?






そう脳裏に過ぎったけれど






オレはあの2人より、きっとこの男と逝く事を選んだだろうし、現に選んでしまっている。






























「エクボ」
「なんだよ?」




広い背にそう呼び掛ければ、肩越しに振り返って、怪訝そうに眉を顰める。






「Trick or Treat?」
「――…残念ながら、ガキじゃあるまいし、菓子なんて持ってねぇよ」


そう言って繋いでいた手を力任せに引き寄せれられ、オレはあっさりバランス崩して男の胸へと飛び込んでいた。






「――…っっ///」
顎を掬うように添えられた手。
覆い被さる様に唇を塞がれ、その舌が口をべろりと舐める。




そのまま抵抗も虚しく咥内へ侵入した舌先にざんざん弄ばれて、混じりあった唾液が飲み干せないまま唇の端を濡らしてゆく。




「ん、――…ふっ」


上手く呼吸すら出来なくて、目の前男のジャケットを握り締めれば満足したのかその唇がゆっくり離れ、伸びた銀糸がプツリと切れた。




呼吸の整わないオレを愉しげに見詰め、甘かっただろと笑う。
そして、その口角がニヤリと上がる。


「俺様からも、Trick or Treatだ」
「――…ッッ、な、い」


返されたお決まりの言葉に、思わず視線が揺れる。








「んじゃ、後でたっぷり悪戯させてもらうかね」


「――…//、エクボだってお菓子くれないじゃん!」






オレの非難にクツクツと笑いいなが、男は再び歩き出す。






「さぁ、帰ろうぜ」
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