プロポーズ大作戦

□日本の場合
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四季のはっきりとした極東の友人の家にやってきた。

昔と比べてあまり訪れなくなった屋敷のインターホンを押すと、変わらぬ姿の友人が微笑みながら迎えてくれる。
今日は家同士の仕事の話で来たんだ。

「すまんな日本。本当は上司も来るはずだったんだが…」

「いえ、お気になさらずに。今の西欧は大変だと伺っていますし、ドイツさんの上司様なら各国から引っ張りダコでしょう」

「忙しいのはどこの国も変わらないぞ。日本も家の仕事が山積みだろう。お互いのためにも有意義な話し合いを手早く進めて行こう」

「はい」

節度と礼儀、控えめな態度の日本は相変わらずで、いまだ慣れない靴を脱ぐ動作をし、日本家屋へと入って行った。
この国での言葉で"客間"と言う部屋に通されると、畳の匂いが香ってきた。
熱いお茶をお盆に乗せ、日本は「粗茶ですが」などと言う。(お茶を出す時の決まり文句なのだろうか?)

日本が俺の向かいに座ってから、二ヵ国間での会議は始まった。

お互いの手元の資料を見ながら環境問題や貿易について、日本は理屈っぽいと言われる俺の考え方と似ているのでヨーロッパの連中と話すより断然違うスピードで会議が進む。

これなら予定していた時間よりも早く終わるな。

「そう言えば、イタリア君とお食事をなさったようですね」

まるで思い出したかのように突然話を振ってきた日本。
それはとても珍しいことで少し驚いたが、それよりもその台詞の内容の方に驚かされ、俺は目を見開いて固まる。

「なっ何故それを…」

「イタリア君から電話で聞きました。彼、凄く喜んでいましたよ」

そういえばイタリアは同盟時代から遠く離れた日本に近状報告をよくしていた。
俺とイタリアが付き合い始めた時も最初に報告したのはこの東洋の友人だった気がする。

俺達三人は日本が遠くに住んでいる関係で、三人で会うことが少ない。
だが、やはりとても大切な友人と言う点で、俺達は結ばれている。
そんな日本だからこそ、イタリアは近状を報告するのだろう。

俺も…今回の悩みを話してみるべきか。

「その…日本、今日の議題とは関係ないんだが相談したいことがあるんだ。少し時間良いか?」

「はい、構いませんよ」

特に嫌な顔をしない日本だが、俺は面と向かって相談するには気恥ずかしいような気がして視線を一度反らす。

俺の悩みはイタリアだ。
付き合い始めてしばらく経つイタリアにプロポーズをしたいと考えているのだが、恋愛に関してあまり得意とは言えない俺が気の利いたことを思い付かない。
そうして、前はハンガリーに相談、フランスに協力を頼んだが失敗した。

また頼むのは悪いだろうし、日本ならもっと良い案をくれるのではないだろうか。

「じ、実は…あ…イタリアに…」


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