プロポーズ大作戦
□小休止:イタリアの場合
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『え?ドイツさんの様子がおかしい?』
「うん…なんか最近ずっとおかしいんだよ」
『それはどのようにおかしいのでしょうか?』
「…言葉にはできないけど、いつものドイツじゃないってことはわかる感じかな?」
『そうですか…』
「ねぇ日本、何か心辺りとかない?俺もしかしたら気づかないうちにドイツを怒らせちゃってるのかも…」
『…………さぁ?爺にはさっぱりわかりませんが、きっとドイツさんは何か考えがあっての行動をしているんだと思います。イタリア君は彼の行動をゆっくり見守っていてあげてください…』
「どういうこと?」
『ふふっ。悩むのもよろしいとは思いますが、"信じて待つ"と言うこともたまにはしてみるものですよ』
「………?」
『では、これからポチくんと散歩に参りますので…』
「あ、うん。じゃーねー」
『また御報告お待ちしてますよ』
ガチャンと音を立てて、世界各国に繋がる謎の黒電話の受話器を置いた。
イタリアは悩んでいた。
「ドイツ…どうしちゃったんだろう…」
待つべき、と日本に示唆されたにも関わらず、彼の頭の中には最愛の恋人のことしか頭にないようであった。
ドイツの顔を思い浮かべ、溜息を着いてソファーに座る。
昼間に会ったばかりだと言うのにイタリアは物足りなく感じているらしく、足をパタパタとさせながらテレビを見ていた。
その目の前ではロマーノがテーブルの上にワインやらチーズやらを用意している。
イタリアが21時から見たかった映画が放映されるので準備していると言うのに、イタリア本人にはどうにも興味が湧かない。
と言うのも、自分が昼寝をしていたソファーを撫でながら今日のできごとを振り返っているからだろう。
彼がここで寝ていた時、夢の中で呼ばれた気がしたのだ。
『イタリア』
「ドイツ…」
あの声は、確かに恋人であるドイツのものだった。
しかし、『好きだ』『愛してる』と言った普段の彼からは決して発することのない言葉を聞いて、少し疑問に思ってしまった。
イタリアを愛おしそうに呼ぶ声は、誰なのか。
すると遠い遠い記憶の鍵を開けるように小さな思い出も引き起こされる。
あの子に似ていた。
イタリアはそう思ったようだ。
でも声音は確かにドイツなのだ。
物理的な矛盾と、仮定の世界での希望と、そうであればと言う願いが、あのような幻覚を見せたのではないか。
そう結論づけて、イタリアはスッキリしたように微笑んだ。
「ドイツはドイツだもんね」
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