10/03の日記

11:39
こんなにも、違うのな。
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「ここが戦時中だったらさ、あんたどっちにつく?」
「どっちって?」
「戦争反対の非国民か、戦争万歳の国民か」
「んなの、後者に決まってるよ」
「どうしてさ?」
「え、だって」
だってその方が、楽じゃないか。
無駄に批判もされないし、敵を増やす事もない。
心からそうは思っていなくても、その単語を叫べば、自分の体裁は守れるんだ。
わざわざ自分の思っていることを口にだして、まわりから白い目で見られることもない。
「楽だからだよ」
楽だから。当然で単純で普遍的な答え。
その言葉に、彼はふうんと頷いた。
口元には笑み。
でもそれは、肯定の笑みではない。寧ろ、嘲るもののように、僕の瞳には映った。
成る程ね。君はやっぱりそうなんだ。
笑いきらない目が、僕を見つめる。
「お前は、どうなんだよ?」
「俺?」
そう、お前。
嘲るお前の答えは、僕と違うのかよ。
立派な答えを、嘘でなく、堂々と口に出来るのかよ。
試すようにのぞき見ていたこいつの口が、ゆっくりと開いた。

「後者、かな」
「は?」
「だから、戦争万歳」
「……お前さあ」
僕と変わらないじゃん。
呆れて続く言葉は出てこない。
変に入っていた肩の力が抜けて、かわりに怒りが込み上げてくる。
涼しげな横顔に噛み付く勢いで、俺はコイツを睨みつける。
「でも」
「……なんだよ?」
「お前の考えてる理由とは、違うから」
「は?」
ニカ、と。ほんのり黄ばんだ歯が顔をだす。
「愛国心、かな」
「なんだよそれ、時代遅れだろ」
「愛国すんのに時代遅れも何もねえよ」
カタカタと、肩を揺らしてコイツは笑う。
愛国心。自分の意思。こうなるから、なんて理由のない、純粋な選択。
言っている事は同じなのに、歳だって、さほど変わらないのに。
どうしてこうも、違ってしまうのだろうか。
舌打ちを一つ、鳴らしてみる。
気晴らしになるはずだったのに、なんだか余計、腹が立った。

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