Temptation

□X'mas!!
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「名取さん!!」

バタンとドアを開け放して夏目がバタバタと玄関へ走り込んできた

金色の大きなリボンが付いた赤い袋を胸に抱きかかえて
帰って来たばかりの俺を目を輝かせて見上げて来る

最高にいい笑顔で微笑み返すと
さらに頬を染めて袋を俺に見せて来る

(やっぱ、抱きついて来てキスくらいは・・)

なんて見下ろしていると

「サンタさん来ました!!」
「クス・・ああ、みたいだね・・さぞかし男前な・・・」
「俺・・・俺産まれて初めてです!!」
「ああ、そうか・・そんなに喜んで・・」
「子供じゃ無いのにいいんでしょうか?」
「いや・・恋人ならここは・・」
「しかも俺・・お手紙書いてません!!」

「え?・・・・」

袋をギュウッと抱きしめて、俺の言葉を散々無視しながら
何故か夏目は天井に向かって叫んでいる

「あ・・・あれ?」
「どうしよう!すごく嬉しいです!」

くるりと反転して、リビングへと戻る後ろ姿を唖然と見送る

「まさか・・・・えぇ??」

現代の高校生がサンタクロースなんて人物が実在しているなんて
よもや思って無いだろうな・・・
いや・・しかし、どこか浮世離れしてる夏目の事だし
今までの幼少期にプレゼントなど貰った事が無いわけだし

吃驚して、喜ばして上げようと
寝ている夏目の枕元にプレゼントを置いて家を出た結果が
まさかの事態になるだなんてさすがの名取でも想像してなかった事だ

頭の中で色々とグルグルしながら
夏目が大きい声で呼んでくる声に引っ張られながら
リビングへ行くと、ソファに座りながら手招きしてくる

「名取さんはプレゼント置いてなかったんですか?」
「・・・・ああ、、え・・・と・・・・あ!そうそう俺はハタチ越えちゃってるからさ!」
「ああ、そうですか、残念ですね・・でも今まで沢山貰ってるんでしょ?」
「んん〜・・そうは無いよ?、サンタから貰えるのは1回だけだよ」
「え??そうなんですか?」
「そりゃそうだよ、毎年上げてたらサンタも大変でしょ?」
「そうですよね・・・じゃあ、俺は今まで貰えなかったのは不思議でもなんでも無い事なんですね?」
「そう、たまたま今年になっただけだよ」

「なんだ、そうだったんだ・・俺は良い子でも無かったしどの家でも迷惑かけてたから・・だから貰えないんだって思ってました・・」
「夏目は良い子だよ、それは俺が保証する」

少し俯き加減に話す頭をグリグリと撫でてやると、嬉しそうに見上げて来て
「開けてもいいでしょうか?」
「勿論、何を貰ったのか見せてよ」
ガサガサと開けて中を覗いてから嬉しそうに見てくる
「PSPだ・・・なんで欲しいの知ってたんだろ・・しかもゲームまで付いてる」
「そりゃ・・万能の人だからね・・うんうん」

俺は何処まで話を合わせたらいいのか・・
等と頭で思いながら、コートを脱ぐ暇すら無いまま、床に夏目と共に座り込んで
頷いている自分は少し滑稽な気がする

でもこれだけ無邪気に喜んでいる夏目を見るのも始めてで
そんな様子を苦笑気味に眺めているのも
悪い気はしないなと

ただ来年のクリスマスは
悪いけど、ネタ晴らしさせて貰うよ
今年はあの髭面のおじいさんから貰った事にしておいてあげるさ

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