れんさいもの

□深い森
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いつも通りに、わざわざ時間を作り
会いに行くと
途端に面倒くさそうにこちらを見てくる視線に苦笑する
以前なら、苛ついたであろう
目つきも、流せられる自分が大人になったなと思う

「今度はなんですか?」
「ん?別に何も無いよ、どうしてるかと思って会いに来ただけ」
「暇なんですか?」
「ひどいな〜、これでも人気ある方なんだけど」
木に体をもたせかけて苦笑する
夏目は眉を寄せて、こちらをジッと見てくる
学校帰りに捕まえた夏目は、学生服の裾をギュッと握っている
強く握っているのか、手の甲が白く浮いている
「ごめん、迷惑かい?」
「・・・・そこまで言ってません、俺なんかにわざわざ、忙しい人気ある
俳優さんが会いに来られる意味が分からないだけです」
忙しいと人気に力を込めて、そっぽ向きながら言う夏目
その様子に笑ってしまう
「・・・・・」
また、眉を寄せながらこちらを見てくる
「だって、夏目はやたら妖と仲良くするでしょ?で、土壺に入るじゃない
また、やっかいな事になってないかとかさ」
「自分から好きこのんでしてるわけじゃないです」
「そうかい?」
くすくす笑う俺をさらに苛ついている目つきで見てくる
ここらへんでやめておいた方が無難だ
「じゃあ、帰るよ、元気な顔もみれたし」
「はあ?・・・これだけの為にわざわざ?」
「そうだよ、何かあれば連絡してくれよ、少しは手助け出来るかもしれないしね」
夏目の頭をポンポンと叩くと、じゃあと離れる

呆然と感じで見送る視線を感じ、くすりと笑う
自分でもわざわざ10分にも満たない逢瀬の為に、車を1時間も飛ばして来てる意味なんて分かるか!と毒づく

<重傷だな・・・>
こんなに人に対して執着することなんて無いのにな


でも、何か彼はキズを抱えているな・・と思う
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