Beloved feeling

□*nine*
8ページ/15ページ


「酒臭いって・・・」
と半ば押しのけながら、コソコソ呟く
夜中だし、安普請のアパートだから音が響きそうだ
「んん?酒の他に妙な匂いしない?」
俺は鼻を名取の首筋に寄せると、暗闇でも目に入る襟に付いた赤い色
「何、口紅なんて付けてんだか・・・しかも香水まで・・」
俺はそっぽを向いて上掛けを頭の上までかぶる

(明日は絶対1人で行ってやる・・誘ってなんてやらない)
イライラしながら寝ようとすると
上掛けをペラリとめくられる
「何?・・」
多少苛ついたまま覗き込んでくる名取を見る
なんだか飲んでる割には真剣な顔をしている
「・・・・なんだよ?」
黙ったままなのが怖いってと思いながら呟くと
「女抱いた後でここに来ると思う?」
「はい?」
俺は眉を寄せて聞き返す
「答えて」
「そこまで思ってないけど・・・・抱いてきたのか?」
「いや」
「なんだよ!」
「だって、拗ねるから」
「だ!誰が拗ねてるか!」
「なんかさ・・・入ってる事務所が雑誌の編集者や、カメラマンとか交えての
接待飲み会だったの・・いつもは誘われたら気軽に抱いてやってたからさ・・・」
「・・抱いて・・やってたって、お前・・・何様?」
「ほんとに・・」
クスクス笑う
「笑ってるし・・・呆れる」
「本当に・・今日、そんな自分に気づいたんだよ」
「はあ・・・」
「ああ、すんごい傲慢だった自分に・・で、酒を煽るように飲んでこのざま・・」
「あ・・・そう・・気づけて良かったね、おやすみ」

また上掛けを顔に戻す
で、またペラリと捲られる
「なんだよ!反省なら懺悔室でも行って1人でしてこい!俺は眠たいんだよ!」
「懺悔室なんて何処にあるんだよ」
俺は無言で玄関を指さす
名取は指の先を見て、肩をすくめて
「イヤだよ・・せっかく暖かい場所に来たのにまた寒い中に出るなんて」
「じゃあさ・・・黙って寝ろよ」
もうイヤイヤ呟くと、名取は俺の顔を自分の方に向かせて
唇を合わせてくる
「んんん〜!!」
抗議の声を上げて、肩を叩く
「やめ・・・」
見下ろしてくる顔を見て呟くが、そのまま首筋を嘗めあげられる
「もう!止めろって・・・」
「そんなにイヤ?」
「・・・・・」
「ん?」
見下ろしてくる顔に呟く
「その香水の匂いがイヤ・・・口紅が付いたシャツも」
シブシブ本音を呟く
名取は起き上がってシャツを脱ぎ捨て
俺が放りっぱなしだったタオルで首筋を拭う
「どう?匂う?」
「・・・・大丈夫」
名取は笑って唇を合わせてくる
「もうさ・・俺ね、夏目しか無理なんだよ・・」
首筋に顔を埋めながら、そんなセリフを呟く
「・・・・」
返す言葉が無い
「夏目しか抱けない・・・夏目にしか欲情しない・・・」
唇を合わせてきて、つぶやく名取の頭を抱き寄せる
なんだか凄い殺し文句だなと思う・・

「分かった・・信じてるから」
「うん・・・」
言いながらパジャマを脱がされていく
なんだかこのアパートで名取とこんな風に抱き合ってる
事態に顔が熱くなる
キスを落としながら、名取がニヤリと笑う
「声・・・響くから手で塞いでた方がいいよ・・俺としては残念だけど」
「おまえ・・・」
抗議の声は、あっさり敏感な所を嘗められて消えてしまう
それからは名取の言う通り
必死で声が洩れないように頑張るしかなかった俺・・・
めっちゃ疲れた・・・・
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ