Temptation

□名取誕 2
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内容までは聞こえないので、そのままパタパタと走り回り戸締まりが済んでから振り返ると、タイミング良く明かりを落とされる
そのまま電話をしながら、目線で玄関へと促されるので
自分の鞄を持ち、玄関へと急いで押し出されるように外へ出る

そのままエレベーターへ乗り込み向かったのは地下駐車場だ
いつの間にか電話を切っていた名取さんが背中を軽く押して
車へ向かい、後部座席に荷物を放り込んでから
助手席へ乗りシートベルトをはめた途端に車は動き出す

いつも突発的に動き出す人だからあまり驚きもしないのだけど
今回はあの話の流れでなぜ、いま車に乗り込んで走り出しているのかが
さっぱりわからずにぼんやりと窓の外をみていると、あっという間に車は見慣れた緑の看板をくぐって高速へと突入していく
あれからお互いに口を聞かないので車内はラジオの音だけが流れ
たまに入る渋滞情報は都内だけの話しになっている

カーナビにも渋滞情報は出ておらずスムーズな車の流れに乗って
外の景色が後ろへと流れていく
運転席をみると、いつの間にかサングラスをしている
なんだか機嫌がよさそう

「あの・・・」
「ん?なんだい?」
「何処に向かっているでしょう?」
「今日さ、うちに泊まるって言ってるんだよね?」
「あ・・はい、それは言ってから出てきました」
「なら大丈夫だね。お昼は着いてから食べようね。美味しいお店があるんだよ」
「はあ・・・」
笑顔で楽しそうに話してくれるが、質問に答えてくれそうに無いので
諦めてそっとため息を吐く
どうやら車の行き先は長野県らしいというのは関越に入り
行く先の看板が出てからだが
しばらく走って2時間半ほどで、洒落た洋館の前に車が止まる

「丁度いい時間だ、もう空いているだろうから待たずに食べられるよお腹空いたろ?」
そう言われて時計を確認したら2時近い時間だった
「ランチなんて終わってるんじゃ?」
「大丈夫、ちゃんと電話して置いたから」
ウインクをして、車を降りていく後ろ姿を軽く睨んでおく
(さっきの電話・・レストランにしてたんだな・・)
人気ある観光地でも、中途半端な時期の平日ともなれば空いているみたいで
さほどの人気(ひとけ)は感じない
小さな看板しか出ていないレストランの入り口は綺麗なステンドグラスがはめ込まれた
白い綺麗な扉だ。中に開けて入れば綺麗な鈴の音が響き渡る
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